2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14206020
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
井鷺 裕司 広島大学, 総合科学部, 助教授 (50325130)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅野 透 (中静 透) 広島大学, 総合地球環境学研究所, 教授 (00281105)
湯本 貴和 広島大学, 総合地球環境学研究所, 教授 (70192804)
川口 英之 島根大学, 生物資源学部, 助教授 (40202030)
崎尾 均 埼玉県農林総合研究センター, 森林支所, 専門研究員
金子 有子 滋賀県琵琶湖研究所, 研究員 (90280817)
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Keywords | 送受粉 / 長期大面積調査プロット / 多様性維持機構 / マイクロサテライトマーカー / 森林生態系 / 遺伝子交換 / 繁殖特性 |
Research Abstract |
熱帯多雨林の生物多様性を支えるフタバガキ樹木に関してIsagi et al. (2002)によるマイクロサテライトマーカーを利用して、送粉距離やパターンを解析した(Kenta et al. 2004)。その結果、個々の花粉飛散距離は、定常的に数百メートルにも及んでいること、そして、大量開花年とそうでない年において、訪花昆虫のタイプは著しく異なるが、他殖率や有効な送粉距離に差は認められないという興味深い結果が得られた。 渓畔林の動態を野外調査で明らかにし(川西ほか2004)、更に渓畔林構成要素として重要な役割を果たしている風媒の樹種カツラについて、稚樹の動態を明らかにした上(Kubo et al. 2004)で、本研究で開発したマイクロサテライトマーカー(Isagi et al. in press)を用いて、北海道と東北に設定された大規模調査地において送受粉様式を詳細に解析すると共に、種子散布様式や日本全土にわたる遺伝構造をも明らかにした。その結果、カツラにおいては送粉距離、種子散布距離共に大きく、個々の調査サイト内において明瞭な遺伝構造は見られなかった、地理的な遺伝構造に関しては、調査範囲をより広め、日本全国をカバーする範囲で解析を行うと認められた。定常的に行われている長距離の送粉が弱い遺伝構造の形成に結びついていると考えられる(Sato et al.投稿中)。 ホオノキにおける送受粉様式を個体レベルや更に個々の花レベルで詳細に解析した(Isagi et al. 2004)。その結果、自殖率、送受粉距離、花粉親の組成などは、個々の種子親レベルや花レベルで大きく変異しており、従来の肉眼による訪花昆虫の運動様式から推定されてきた送受粉パターンとは著しく異なる実態が明らかになった。 最終年度であるので、学術雑誌(井鷺2004,島谷ほか2004)や一般書籍(井鷺2005、金子2005)において、研究の総括的な成果をとりまとめ、公表を行った。
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