2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14310006
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
別所 良美 名古屋市立大学, 大学院・人間科学研究科, 教授 (10219149)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 秀樹 立教大学, 文学部, 教授 (60103389)
野家 啓一 東北大学, 大学院・文学研究科, 教授 (40103220)
溝口 宏平 大阪大学, 大学院・文学研究科, 教授 (80116178)
伊坂 青司 神奈川大学, 外国語学部, 教授 (30175195)
横山 輝雄 南山大学, 人文学部, 教授 (80148303)
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Keywords | 共生 / 和合 / 国家 / 政治的公共性 / 正義 |
Research Abstract |
本年度は、国内での研究会を3回行い、そこでの議論の成果をもとに海外での共同研究会(韓中日哲学研究交流会「国家間の共生・和合に向けて」於:ソウル・延世大学)を開催し、活発な議論が行われ、これまでの中日間の研究交流から韓中日の研究交流へと先展させることができた。 平成15年度の研究において、「共生とは、異質性と多様性を前提したうえでの、相互承認であり、同一化ではない」という認識を共有したが、平成16年度の研究では、共生を「国家間の共生」という次元で考える場合に発生するさまざまな問題が究明された。 中国で張立文氏の「和合学」は、中国の自由化とグローバル化の波に抵抗するという文脈の中で唱えられている。S. サッセンが指摘するように、グローバル化の進行は南北間格差を固定・拡大し、グローバルな労働力移動の問題を先鋭化させており、この問題圧力の高まりは、「会話」といった相互承認ルールでは制御できない事態、すなわち直接的暴カがいずれの側においても発現する危険性を日々増大させている。「9・11」テロ後の世界においては、「異質性を承認し合う共存」という抽象的な共生概念がそれだけでは無力であり、この概念の社会哲学的な具体化が求められる。 グローバル化の中で国家の役割の低下が指摘されているが、「異質性を承認し合う」制度としての国家の役割を再考する必要がある。人権、環境、伝統文化に関して、国家主権は常に二面的でアンビヴァレントであり、それらを保護するとともに制限・抑圧する二側面をもつという認識から出発すべきである。そこで主権的国家という制度を維持しつつ(国家の抑圧的側面を)制限するために、EUをモデルとする「地域共同体」を東アジアでも構築すべきだという提案がなされた。しかしながら東アジア地域共同体を、経済共同体ないし政治共同体としてのみ構築可能なのか、あるいはその基盤として文化共同体として構築する必要があるのか、またその可能性があるのかについては、韓中日の研究者の間で活発な討議が行われたが、共通認識に達したわけではない。戦前日本の国家独占資本主義が侵略主義に陥った経済的要因と文化的要因の連関を解明すべきという視点、梁啓超のナショナリズムの両義性を分析することに希望を見出す視点、中国伝統思想の中に脱中心的な文化概念を見出し、非実体的文化共同体を共生的な政治的地域共同体に接合しようとする視点、さらに文化概念を地理的・自然的条件と結びつけることで「東アジア地域共同体」を可能にするという視点が提起された。
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Research Products
(11 results)
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[Publications] 別所 良美: "歴史の真実とネイション・ステイト"社会と倫理(南山大学社会倫理研究所). 第16号. 38-51 (2004)
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[Publications] 野家 啓一: "現代哲学の対立軸"思想. 第948号. 1-4 (2003)
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[Publications] 野家 啓一: "現代哲学におけるマッハの位置"『情況』第3期. 第4巻第4号. 183-195 (2003)
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[Publications] 野家 啓一: "<情報内存在>としての人間:哲学から見た情報概念"パラダイムとしての社会情報学(正村俊之ほか編)(早稲田大学出版部). (所収). 69-98 (2003)
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[Publications] 野家 啓一: "物語行為による世界制作"思想. 第954号. 54-98 (2003)
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[Publications] 伊坂青司: "現代思想と溶解する生と死"神奈川大学評論. 第47号. 2-11 (2004)
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[Publications] 伊坂青司: "森有礼の「妻妾論」をめぐって-伝統的「家」社会と近代家族の葛藤-"『明六雑誌』とその周辺-西洋文化の受容・思想と言語-(神奈川大学人文学研究所編)(御茶の水書房). 3-33 (2004)
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[Publications] 森村修: "差異化する身体-シンポジウム「メディアアートと哲学の間に」の余白に"異文化. 5. 1-12 (2004)
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[Publications] 野家 啓一(竹中興慈・岩渕康民と共編著): "アメリカを知る技法"宝文堂. 216 (2003)
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[Publications] Keiichi Noe, [Shigehiko Hasumi, Hsien-hao Liao, Seong-Kon Kim, Yasunari Takada]: "Postmodernism in Asia : Its Conditions and Problems"The University of Tokyo. 115 (2003)
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[Publications] 野家 啓一: "『科学の哲学』2004.3"放送大学教育振興会(近刊). 165 (2004)