2003 Fiscal Year Annual Research Report
北海道続縄文人の系譜論的・生活論的研究-有珠モシリ遺跡出土人骨を中心にして-
Project/Area Number |
14340271
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
百々 幸雄 東北大学, 大学院・医学研究科, 教授 (50000146)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴田 康行 国立環境研究所, 科学環境研究領域, 室長(研究職) (80154251)
松村 博文 札幌医科大学, 医学部, 講師 (70209617)
石田 肇 琉球大学, 医学部, 教授 (70145225)
坂上 和弘 東北大学, 大学院・医学研究科, 助手 (70333789)
安達 登 東北大学, 大学院・医学研究科, 講師 (60282125)
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Keywords | 有珠モシリ遺跡 / 続縄文時代 / 北海道 / 形態学 / DNA分析 / 食性分析 / 系統論 / 生活論 |
Research Abstract |
1.永久歯と乳歯の歯冠形態の分析から、続縄文人が北海道の縄文人およびアイヌと系統的に連続することが確認された。 2.ミトコンドリアDNA分析から以下の2点が明らかになった。 (1)有珠モシリ7号墓の男女2体の合葬人骨には母系の血縁がない。 (2)有珠モシリ続縄文人と北海道礼文島船泊遺跡出土の縄文人のhaplogroupはともにN9bを主体とする特徴的な頻度分布を示した。これは現代本州人のhaplogroupの頻度とはまったく異なっており、ミトコンドリアDNA分析からは北海道縄文・続縄文時代人は特異である。 3.有珠モシリ人骨にみられるストレスマーカーについては次の2点が明らかになった。 (1)クリブラ・オルビタリアは、同様の環境にあるアリュートやアラスカエスキモーよりも出現頻度が高い。 (2)エナメル質減形成は、本州縄文人やオホーツク人と同様に比較的低い出現頻度を示し、東南アジアの先史時代人よりも明らかに頻度が低い。 4.有珠モシリ続縄文人における齲歯の頻度は本州縄文人より格段に低いが、歯の生前脱落は比較的高頻度であった。 5.続縄文人の大腿骨の頑丈性は縄文人と大きな違いはないが、オホーツク人、とくにモヨロ貝塚人よりはるかに繊細であることが確認された。 6.有珠モシリ16A号の全身骨格を復元した解剖学的方法による身長推定の結果、この女性人骨の生前身長は144.7cmと判定された。 7.有珠モシリ人骨43個体分の炭素・窒素同位体比の分析結果から、これらの人々はキタオットセイなどの海獣資源を十分に活用する特殊な生業形態を送っていた可能性が考えられた。 8.有珠珠モシリ人骨の9個体について放射性炭素年代測定が完了した。続縄文時代恵山期という考古学的解釈より見かけ上古い年代が得られたが、海洋リザーバー効果の影響を補正すると、概ね既存の年代観と一致する結果となった。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Adachi, N.: "Molphologic and genetic evidence for kinship of juvenile skeletal specimens from a 2000 year-old double burial of the Usu-Moshiri site, Hokkaido, Japan"Anthropological Science. 111. 347-363 (2003)
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[Publications] 松村博文: "渡来型弥生人の拡散と続縄文時代人"国立歴史民俗博物館研究報告. 107. 199-216 (2003)
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[Publications] Matsumura, H: "Harris lines of the prehistoric people in Hokkaido, Japan"International Journal of Osteoarchaeology. (発表予定). (2004)
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[Publications] Matsumura, H.: "Dental molphology of the Epi-Jomon people in Hokkaido"Anthropological Science. (発表予定). (2004)
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[Publications] Higa, T.: "A comparative study among Ryukyu, Ainu and other Asian populations"American Jouranal of Human Biology. 15. 127-143 (2003)
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[Publications] Yoneda, M.: "Interspecies comparison of marine reservoir ages at the Kitakogane shell midden, Hokkaido, Japan"Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B. (発表予定). (2004)
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[Publications] 百々幸雄: "北上山地に日本更新世人類化石を探る"東北大学出版会. 420 (2003)