2002 Fiscal Year Annual Research Report
都市域地表形態を再現した風外乱ガスト構造の数理モデルの構築と耐風設計の高度化
Project/Area Number |
14350298
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
田村 哲郎 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 教授 (90251660)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
曹 曙陽 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 助手 (00334532)
坪倉 誠 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 講師 (40313366)
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Keywords | 風外乱 / 都市 / 地表形態 / シミュレーション / LES / SGS乱流モデル / ガスト / 耐風設計 |
Research Abstract |
地表に建つ建築構造物の耐風安全性をより確かなものにするには、高さが100から200m程度以下の地表近傍での風の特性の把握が重要である。しかしながら、地表は、様々な形状の建築物あるいは多種多様な植生によって覆われ、近傍領域は一様な空間とはなっていない。特に都市域では、中層から高層の建物などが密集し、高さ数10mから100m程度まで地表の形態は大きく変化している。本研究では、近年の流体計算技術の急激な発展を踏まえ、申請者らが開発してきた計算技術を活用することによって、都市域の地表近傍における建物形状をそのまま取り込みながら強風の乱流構造を高精度に予測できる数理モデルを構築し、解析を実施する。また地表近傍での形態による影響を踏まえた上での強風ガストの構造および強風の変動性状を明らかにし、実際の風作用に基づいた建築物の耐風安全性を確保し、耐風設計の高度化を実現する。本年度得られた成果を以下に示す。 1.任意形状まわりの流れのデカルト座標系解析手法の開発 従来の流体解析法においては、任意形状まわりの計算で一般座標系によるものがほとんどであったが、地表面に建つ建築物の集合体が解析対象となることから、座標変換などは用いないできるだけ簡便な手法としてデカルト座標系に対して支配方程式にソース項を加えることにより物体形状を表現するImmersed boundaryを用いることとする。ここではその考え方に基づき、計算スキームを考案し、解析プログラムを作成した。 2.ラフネス近傍における複雑乱流の風洞実験とそれに基づくSubgrid Scaleモデルの提案 大都市密集地では建築物がきわめて大きなラフネスとなり、その近傍の流れは非定常な渦で構成されて、独特な乱流構造となる。ここでは一様な粗面としてモデル化できない非常に大きなラフネスに覆われた地表面近傍での乱流構造を明らかにするため、風洞実験を実施した。さらに得られたデータに基づきラフネス近傍における複雑乱流のSubgridScaleモデルを構築した。 3.領域分割に基づく並列アルゴリズムの開発 乱流シミュレーションでは圧力のポワソン方程式の解を求めることがきわめて大きな計算負荷になる。ここでは領域分割法によってこの種の境界値問題を反復法で解かなければならないが、従来のヤコビ的な領域境界値の通信では、収束性を著しく悪化させることになる。ここでは領域境界にマルチカラー技術を持ち込むことにより、高い計算効率を確保するようにした。 4.GISデータに基づく都市計算モデルの作成 近年、都市に関するGISデータとして建築物の高さ情報も整備されるようになった。ここでは、そういったデータを活用し、実在する都市の計算モデルを作成した。その際、建築物スケールの最小スケールを都市密集地における建築物の耐風性能を評価する上での必要性から物理的な考察に基づき決定するようにした。 5.都市部観測データの収集と整理 次年度シミュレーション実施する実在する都市を選定するために、既往の研究成果に基づき、都市部における観測データを収集し、接地層における乱流特性について検討を行った。
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[Publications] Tetsuro Tamura: "Large eddy simulation using a curvilinear coordinate system for the flow around a square cylinder"Wind and Structures. Vol.5, No.2-4. 369-378 (2002)
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[Publications] 田村哲郎: "空間発達乱流境界層LESの都市域強風への適用性・乱れ特性の対応に関する検討"日本建築学会構造系論文集. 第554号. 37-44 (2002)
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[Publications] 田村哲郎: "Re=1,000のオーダーの断面辺長比の小さな炬形中の空力および流れの特性に関するLES研究-流体計算と風洞実験の相補的技術の確立をめざして-"日本建築学会構造系論文集. 第558号. 69-76 (2002)
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[Publications] Tetsuro Tamura: "Large eddy simulation of the flow around a low-rise building immersed in a rough-wall turbulent boundary layer"Journal of Wind Engineering and Industrial Aerodynamics. 90. 1151-1162 (2002)
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[Publications] 田村哲郎: "模擬された自然風下における立方体構造物まわりの流れのLES"第17回風工学シンポジウム論文集. 315-320 (2002)
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[Publications] 曹 曙陽: "都市の地表面粗度評価のための細密地表粗度データの利用"第17回風工学シンポジウム論文集. 13-18 (2002)