2003 Fiscal Year Annual Research Report
スギ・ヒノキ人工林における伐期・伐採方法が渓流水質に及ぼす影響
Project/Area Number |
14360083
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
生原 喜久雄 東京農工大学, 農学部, 教授 (00014960)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白木 克繁 東京農工大学, 農学部, 助手 (30313290)
岩岡 正博 東京農工大学, 農学部, 助手 (40213269)
戸田 浩人 東京農工大学, 農学部, 助教授 (00237091)
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Keywords | 渓流水 / 小流域 / 水質 / 土壌水 / スギ人工林 / 脚部伐採 / 炭素無機化 / 窒素無機化 |
Research Abstract |
国内林業の不振はスギ・ヒノキ人工林の長伐期化へと移行させ,高齢人工林の伐採が森林生態系に与える影響を把握することは重要である。昨年度に引き続き本年度は,東京農工大学大谷山演習林の高齢(95年生)のスギ・ヒノキ人工林小流域において,脚部伐採(流域の約18%)による土壌水および渓流水の溶存元素動態への影響について継続調査を行った。また,同小流域における,炭素(C)と窒素(N)の動態特性を明らかにするために,無機態N量,純N無機化速度と地表面からのCO_2放出速度などの調査をとりまとめた。 伐採後,表層土壌水のNO_3^-およびCa^<2+>濃度は夏季に上昇,pHは夏季に低下した。これらの傾向には1〜3年目で変化がないものの,徐々に濃度上昇・pH低下の度合いが小さくなってきた。一方,下層の土壌水では伐採1年目より2・3年目の方が,夏季のNO_3^-およびCa^<2+>濃度上昇が大きかった。また,渓流水では1〜3年目とも夏季に同程度のNO_3^-およびCa^<2+>濃度の上昇がみられた。以上のように,土壌が肥沃な脚部伐採による林地環境の変化(地温の上昇,表土の撹乱など)が有機態窒素の無機化・硝化を促進し,その溶存元素へ影響は伐採3年目でも認められた。 無機態N量,純N無機化速度およびCO_2放出速度は脚部スギ林で大きく,尾根部ヒノキ林で小さかった。CO_2放出速度と無機態N量には正の相関性があり,土壌呼吸の盛んな時期に林木に吸収されない無機態Nが存在し,脚部スギ林で多いことがわかった。年間の純N無機化量と水抽出性有機態C消費量には正の相関性があり,C無機化特性の純N無機化量への影響が示唆された。本流域のスギ林はヒノキ林と比べて窒素同化に対する炭酸同化の割合,および無機態N供給に対するC消費割合が小さいと推察された。CとNの循環特性から高齢化した脚部スギ林では,生態系からNが流出しやすいと考えられた。
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[Publications] 戸田浩人: "陸上生態系の物質循環からみた窒素飽和による汚染の構図"資源環境対策. 38・11. 13-18 (2002)
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[Publications] 戸田浩人: "林地残材の収穫や全木集材が森林生態系の物質循環に与える影響"森林科学. 40. 33-38 (2004)
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[Publications] 小柳信宏, 戸田浩人, 久保井喬, 生原喜久雄: "北関東地方の高齢化したスギ・ヒノキ人工林小流域における炭素と窒素の動態特性"日本林学会誌. 86・2(印刷中). (2004)
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[Publications] 保科典之, 夏目佳史, 岩岡正博, 峰松浩彦: "木材生産からみた森林の区域区分手法.(技術的観点からみた人工林の施業区分.森林空間利用研究会編)"森林空間利用研究会,名古屋. 62(57-61) (2002)
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[Publications] 保科典之, 夏目佳史, 岩岡正博, 峰松浩彦: "木材生産を評価指標とした人工林適地,(人工林の適地とはなにか---生態情報と技術論の連携,森林空間利用研究会編)"森林空間利用研究会,名古屋. 49(26-32) (2004)