2002 Fiscal Year Annual Research Report
農業試験研究組織の再編と農業技術開発・普及に関する国際比較
Project/Area Number |
14360125
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
近藤 巧 北海道大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (40178413)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
茅野 甚治郎 宇都宮大学, 農学部, 教授 (40163729)
志賀 永一 北海道大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (50235511)
長南 史夫 北海道大学, 大学院・農学研究科, 教授 (00113697)
原田 淳 宇都宮大学, 農学部, 講師 (30241847)
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Keywords | 農業試験研究 / 農業技術開発 / 知的所有権 / 公共財 / 制度革新 |
Research Abstract |
近年、先進諸国で起こっている農業試験研究システムの変化について論点整理した。財政事情により、効率的な試験研究システムの構築を目的とし制度革新が起こっている。その中身は、(1)公的試験研究部門の基礎的研究への集中化、(2)農産物販売への課徴金等を利用した共同研究基金の設立、(3)研究資金の使途の透明化、(4)効率的な研究資金配分、研究効率の向上を目的とした競争的試験研究配分メカニズムの導入、(5)公的試験研究機関の民営化、(6)公的研究機関の統合再編、である。 知的所有権制度による農業技術開発のインセンティブの強化策も重要である。特許制度は、技術革新のインセンティブを高める。たとえ、農業技術が公共財的な特質をもつとしても、ある一定期間、独占的に技術の使用を制度的に保証することによって、民間部門の農業技術開発のインセンティブを高めることができる。研究資金配分における競争的メカニズムの導入は、研究資金配分の取引費用を削減し、非効率的資金配分を回避できる。長期から短期への研究契約期間の短縮や評価システムの導入は、研究成果が得られない研究プロジェクトの中止を容易にし、研究のインセンティブを高める。さらに、研究資金の管理者は、従来の慣行にとらわれず柔軟に研究資金を配分できる。イギリスおよび日本の農業試験研究機関では約3〜5年間で研究成果の評価がなされ、これに基づきながら研究資金が配分される。しかし、他方、こうした制度革新は、基礎的研究活動をおろそかにし、市場に近い開発研究ばかりを誘発することになりかねない。さらに、農業技術の知的所有権の強化には、農業技術開発のインセンティブを高める効果のほかに、その普及を妨げる弊害も併存している。農業部門には、知的所有権の強化をもってしても着手されず、人類の経済厚生の向上に大きく寄与する、公共財的特質を有する研究テーマが数多く存在する。環境問題や資源問題などはこの典型である。今後、これら一連の制度革新が、経済厚生にいかなる影響を及ぼしているのか関しては実証分析を行う必要がある。
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