2003 Fiscal Year Annual Research Report
血管平滑筋細胞の増殖抑制を介するエストロゲンの抗動脈硬化作用の解析
Project/Area Number |
14370523
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
倉智 博久 山形大学, 医学部, 教授 (40153366)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 亜紀子 山形大学, 医学部, 助手 (30359567)
高橋 一広 山形大学, 医学部, 助手 (20292427)
中原 健次 山形大学, 医学部, 講師 (80250934)
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Keywords | エストロゲン / 血管平滑筋 / 増殖 / 動脈硬化 / 細胞周期 / サイクリンD1 / Rb蛋白 / プロモーター |
Research Abstract |
当初の計画にしたがって、ヒト大動脈の平滑筋細胞の初代培養系細胞(VSMC)と胎児ラット大動脈平滑筋細胞(A10細胞)を用いて以下の研究成果を得た。今年度は、エストロゲンの平滑筋細胞増殖に対する抑制効果のgenomicな作用についておもに検討してきた。(1)エストロゲン(10^<-8>M)は血小板由来増殖因子(PDGF)のVSMCの増殖促進効果を有意に抑制した。(2)フローサイトメトリーによる検討では、細胞のS期へのprogressionを有意に抑制し、エストロゲンは細胞周期の進行を遅らせることによって増殖を抑制することが示唆された。次に細胞周期制御に関与する分子について検討した。その結果、エストロゲンは増殖状態にある平滑筋細胞において(3)cyclin D1蛋白の発現を有意に抑制したが、(4)p27^<kip1>、cyclin-dependent kinase 4の発現には影響を与えなかった。(5)さらにRetinoblastoma(Rb)蛋白のリン酸化を抑制することが明らかになった。(6)また、Rb蛋白のリン酸化の抑制は、エストロゲン受容体(ER)の拮抗剤を用いることにより阻止された。このことより一連の制御機構はERを介して行われていることが示唆されたため、次にERα、ERβのどちらが関与しているかを調べた。ERαを発現していないA10細胞にcyclin D1遺伝子のプロモーターにルシフェラーゼcDNAを接続したプラスミド(D1pro-1749)を導入し、プロモーターアッセイを行った。その結果、(7)A10細胞にD1pro-1749のみを導入した場合、PDGFで促進されるルシフェラーゼ活性をエストロゲンは抑制しなかったが、(8)A10細胞にD1pro-1749とERα発現遺伝子を共に導入した場合、エストロゲンはルシフェラーゼ活性を抑制することが明らかになった。これらの結果から、大動脈平滑筋細胞の増殖抑制機序の1つとして、エストロゲンがcyclin D1の発現量を減少させて、Rb蛋白のリン酸化を抑制することにより、細胞周期G1/S期を制御することが示唆された。また、これらの増殖抑制作用はERαを介して行われていると考えられた。平成16年度は当初の計画に沿って研究を進める予定である。
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