Research Abstract |
小児歯科臨床において,初期齲蝕の再石灰化治療の効率的な方法を検討することは大変有意義なことであるが,In vitroでの研究に必要な初期齲蝕に罹患した新鮮抜去歯牙を多数揃えることは大変困難なことである。そこで,まずホルマリン溶液に保存した抜去歯が使用できればと考え,ホルマリン固定抜去歯と新鮮埋伏抜去歯にフッ素を作用させ,エナメル質表層から内部へのフッ素の分布状態について検討を行った。 方法としては、歯冠を頬舌的に2分割したホルマリン固定歯と埋伏歯の切断面にマニキュアを塗布し,半分を蒸留水に,残りの半分をリン酸酸性フッ化物溶液に5分間浸積した後,37℃の脱イオン水に24時間浸漬しこの操作を5日間繰り返し行った,その後マニキュアを除去したのち,通報に従ってEPMA分析を行つた。次に試料の平滑面に孔径2mmのマスキングテープを塗布し,6Nの塩酸5μlにてエナメル質を脱灰させ,濾紙で吸い取った脱灰液を1mlの脱イオン水に投入し,0.5m.をフッ素イオン濃度測定に,残りの0.5mlを脱イオン水で30倍に希釈後,ICP分析にて定量したCa,P溶出量から累積脱灰深さを算出した。その結果、蒸留水に浸積したホルマリン固定歯には,表層から4〜5μm付近にかけて,埋伏歯よりやや高濃度のフッ素の存在が確認された。また,リン酸酸性フッ化物溶液に浸積した埋伏歯とホルマリン固定歯には,表層から60μm付近にかけて1000ppmを上回る高濃度のフッ素が確認されたが,両者間には統計的有意差はないものの,埋伏歯の方がやや深部へフッ素の広がりがみられた。以上の結果より,in vitroでの研究では,ホルマリン固定歯より埋伏歯の方が問題が少ないと思われた。 次に、平成14年度の結果から、表層下脱灰病変を評価していく上で、QLFシステムがマイクロデンシトメーターに代わる診断方法と結論付けた。そこで、本年度はレーザーを使用する事が再石灰化に有効であるかどうかを検討した。実験材料および方法として、試料は臨床的な理由で抜去されたヒト小臼歯(2本)の頬舌側面のエナメル質中央部付近に約3×2mmのウィンドウを4面設定し、周囲をネイルバーニッシュで被覆した。上記の試料を0.1M乳酸緩衝液(pH4.5,Ca3.0mM,P1.8mM,Carboxymethylcellulosel%,Thymol0.01%)からなる人工齲蝕液10mlの中に浸漬し、37℃の恒温槽に3日間静置し、エナメル質の表層下脱灰を形成させた。3日後、エナメル質上のネイルバーニッシュをアセトンで溶解、除去し、水洗、乾燥し人工う蝕試料とした。レーザー照射条件としては、Nd:YAGレーザー(EPY-PP1)を用いて照射条件を変えながらエナメル質表面の状態をSEM観察した。また、照射条件を(1)100mj,20Hz,10s(2)160mj,20Hz,10s(3)200mj,20HZ,10sの3条件とした。 その結果、3条件とも表層化脱灰試料のエナメル質表面には、亀裂等の実質欠損は認められなかったため今後は照射力を上昇させて観察することとした。
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