2005 Fiscal Year Annual Research Report
植物プランクトンの硫化ジメチル生成に関する生理・生態学的研究
Project/Area Number |
14380247
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
平譯 享 国立極地研究所, 研究教育系, 助手 (70311165)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小達 恒夫 国立極地研究所, 研究教育系, 教授 (60224250)
工藤 栄 国立極地研究所, 研究教育系, 助教授 (40221931)
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Keywords | 硫化ジメチル / 極域海洋 / 植物プランクトン / 低温 / 珪藻 |
Research Abstract |
これまでの結果から、極地から単離した珪藻培養株のDMSPの細胞内生成が細胞の増殖状態により大きく変動し、特にストレス下で含有量が増えることが明らかになった。その成果を、国際誌「Ocean and Polar Research」に報告した。 さらに、塩分環境変動に対する藻類のDMSP生成能を明らかにすることを目的に研究を行った。海氷の融解や生成に伴う塩分変動は、極域海洋の藻類の増殖環境変動として水温変動とともにもっとも顕著である。そこで、極域から単離した3種の珪藻培養株をそれぞれ塩分濃度の異なる4種の培養海水で培養した。その結果、Navicula sp.およびThalassiosira sp.の生長速度は、塩分濃度21.8から35.2の範囲で変化しなかった。それに対し、Haslea sp.の生長速度は、より低い塩分濃度において速かった。培養期間を通じて、Thalassiosira sp.は細胞内にDMSPを生成しなかった。Navicula sp.は塩分21.8において全くDMSPを生成しなかったが、その他の塩分濃度においてはDMSPを生成した。Haslea sp.およびNavicula sp.のDMSP含有量は、塩分濃度が低いときよりも高いときに高かった。ここから、Haslea sp.およびNavicula sp.は高塩分の海水中でDMSPを多量に生成することが明らかになった。上記2種の珪藻は、高塩分で知られるブライン(海氷中に閉じこめられた海水)中において多量のDMSPを生成し、低塩分で知られる融解水では増殖してもDMSPを生成しないことが示唆された。植物プランクトンは浸透圧調整のために細胞内にDMSPを生成するといわれているが、塩分が高くなったときに用いる浸透圧調整物質と低くなったときに用いる浸透圧調整物質が異なる可能性がある。 また、本研究の成果を今後の研究につなげるために、サロマ湖において現場の植物プランクトン群集のDMSP生成能を調べた。現在そのサンプルを分析中であり、分析終了後に本研究の結果と比較を行いながら解析する予定である。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Comparative analysis of photosynthetic properties in ice algae and phytoplankton inhabiting Franklin Bay, the Canadian Arctic, with those in mesophilic diatoms during CASES 03-042006
Author(s)
Ban, A., S Aikawa, H Hattori, H Sasaki, M Sampei, S Kudoh, M Fukuchi, K Satoh, Y Kashino
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Journal Title
Polar Bioscience 19
Pages: 11-28
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