2004 Fiscal Year Annual Research Report
博物館の戦争展示と戦争の記憶の形成に関する実証的研究
Project/Area Number |
14510217
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
濱 日出夫 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (30135644)
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Keywords | 集合的記憶 / 遊歩 / ベンヤミン / 原爆 / ヒロシマ |
Research Abstract |
(1)都市を歩くということが記憶を形成し再生産するうえでどのような役割を果たすのかについて、ヴァルター・ベンヤミンの業績を再検討することによって理論的な考究を行なった。その結果、歴史家が歴史を俯瞰して描く単一の歴史のマクロロジーに対して、人びとが都市を歩くことによって描く歴史は多様に分散した歴史のミクロロジーを生むという理論的見通しを得た(「構築主義と歴史社会学」「社会変動のミクロロジー」参照)。 (2)平成16年8月6日の原爆忌前後に、研究協力者10名とともに、広島市内および広島市周辺をじっさいに歩き、記録を作成し、それらを比較検討することによって、広島市内および周辺に点在する資料館や記念碑をめぐることや、原爆忌前後に開催される記念式典や追悼行事に参加することが、原爆の記憶の形成・再生産に与える影響について、実地調査を行なった。その結果、メディアを通して伝えられる原爆忌についての報道が、原爆の記憶を「国民の記憶」へと求心化するベクトルをもつのに対して、じっさいに都市を歩くことによって形成される記憶は、そのコースが多様であるのに応じて、多様に分散し、原爆の記憶を遠心化する働きをもつことが明らかになった(「ヒロシマからヒロシマたちへ」参照)。 (3)被爆者数名にインタビュー調査を行ない、原爆の記憶と空間がどのようにかかわっているのかを考察した。語りのなかに現われる場所・建物などを地図上にマッピングし、それらを重ねることによって、空間と記憶の関係を現在分析中である。
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Research Products
(3 results)