2004 Fiscal Year Annual Research Report
大峯の口伝・縁起形成に関する文献学的研究-『諸山縁起』を中心に-
Project/Area Number |
14510477
|
Research Institution | SHUJITSU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
川崎 剛志 就実大学, 人文科学部, 教授 (70281524)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
曽根 正人 就実大学, 人文科学部, 教授 (70368695)
近本 謙介 天理大学, 文学部, 助教授 (90278870)
|
Keywords | 大峯 / 口伝 / 縁起 / 南都 / 慶政 |
Research Abstract |
共同研究として、『諸山縁起』のa書誌調査・b本文校定・c訓読・d注釈・e人名索引に取り組んだ。a書誌調査については、落丁を指摘するとともに、原本の書写・校訂・製本作業の工程を推定し、一連の作業に慶政が深く関与していた事実を解明した。b本文校定については、図書寮叢刊『諸寺縁起集』翻刻の限界(普遍的な問題)と若干の誤読を確認した。e人名索引については、僧・仙人と天皇・俗人にわけて作成した。(以上、川崎担当)c訓読については、日本思想大系『寺社縁起』(桜井徳太郎氏)の訓読とは異なる方法、すなわち可能なかぎり原本の古訓をいかす方法で訓読を試みた。(以上、曽根担当)d注釈については、全編にわたる詳密な注釈こそ果たせなかったものの、その作業を通していくつかの点について重要な問題を探り当てた。例えば「大菩提山仏生土要事」のうち、大峯の峯々へ御経を安置し、埋めたと注記される僧名(高僧と行者)を検討した結果、高僧については『僧綱補任』に拠り採用された可能性の高いことが判明した。このことは、当該記事が大峯に伝えられた伝承の堆積物ではなく、大峯埋経を古代から連続する国家的な宗教営為に仕立て上げるべく捏造された記録であることを示す決定的な証拠となる。(以上、全員)このうちa・e項(全体)、c項(一部)の成果を研究成果報告書に掲載した。 そして上記の共同研究及び個別研究の成果(報告書ほか参照)により、『諸山縁起』が院政・鎌倉前期の山岳信仰の口伝・縁起類の単純な集大成ではなく、貞慶による笠置寺中興事業を踏まえた上で、大和国の霊山曼荼羅の再構築を企図して編まれた文献であることを解明した。
|
Research Products
(2 results)