2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14520011
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
若曽根 健治 熊本大学, 法学部, 教授 (40039970)
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Keywords | ウァフェーデ / 謝罪 / 恩赦 / マクデブルク審判人 / 賠償 / 儀礼的交換 / ビッグ・マン / 紛争処理 |
Research Abstract |
I 研究資料の調査・収集 (1)国内においてアジア・アフリカ・オセアニアにおける贖罪と刑罰に関係する史料および研究文献の調査・収集にあたった。とくに法人類学、文化人類学関係の雑誌における研究論文の調査・収集を中心とした。研究の現時点における問題点が明らかになった。 (2)国外(ドイツ連邦共和国)において、16世紀を中心とするドイツ近世のウァフェーデ(復讐断念誓約)の文書の調査および筆写を主にゲッティンゲン大学図書館・ブラウンシュヴァイク文書館においておこなった。未刊史料の保存および公刊の状況の情報が得られた。 II 研究の内容および発表 (1)ウァフェーデ(復讐断念誓約)ついて16世紀を中心に研究にあたった。マクデブルクの審判人判決録に示された、ツェルブスト市裁判所への法意見(法鑑定)の調査からは、贖罪と刑罰をめぐって貴重な史料証言が得られた。「謝罪」の意思表示が恩赦を招き、ウァフェーデの誓約において刑罰を免除させたが、その反面、ウァフェーデの破約に対しては、刑事刑が科せられた。紀要『熊本大学法学部 人文社会論集』第4号(2005)に発表の予定である。 (2)人類学的研究としてパプアニューギニアで起きた1980年の呪術師殺害事件の裁判例に関し研究にあたった。その判決によれば、被告の行為は、金銭的利得や地位を取得といった利己的目的のためでなく、社会的に危険な呪術師(被殺者)に対する自己防衛的なものであったこと、被告は被害者の親族に対し改悛、賠償の意思表示をおこなっていることから、重い刑事刑ではなく懲役3箇月、豚5頭の賠償を命じられた。この判決に知られるのは「緊張をきたした人間関係の回復」であり、ここには贖罪思想の根源があった。熊本大学研究拠点形成報告書に発表の予定である(2005)。
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Research Products
(2 results)