2004 Fiscal Year Annual Research Report
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14540501
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
桑谷 善之 東京都立大学, 理学研究科, 助手 (00234625)
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Keywords | 不飽和シクロファン / π共役系炭化水素 / キャビタンド / 大環状化合物 / デルタファン / 計算化学 / 分子ピンセット / ホストゲスト化学 |
Research Abstract |
フラーレン類の発見以来、曲がったπ電子共役系化合物が注目され、シクラセンやシクロフェナセンなどのベルト状の共役系化合物の合成が世界中の多くの研究グループにより試みられている。これらの化合物は、これまでによく知られている平面共役系とは異なり、特異な電子構造に基づく酸化還元特性や光学的性質、特殊な分子形状に基づくホスト・ゲスト化学や分子間相互作用などに興味が持たれ、これらの性質を利用した有機材料としての物性も期待できる。このような観点から、申請者は、内部空孔を持ったかご状の共役系化合物として、新規なキャビタンド型シクロファンをいくつか設計した。これらの化合物は、剛直な分子骨格を持ち内部空孔を持った三次元的な共役系化合物であるという点で特徴的である。 我々が設計した不飽和シクロファンのうち、ベンゼン環とシクロオクタテトラエンがベルト型に縮環した不飽和デルタファン類とその類縁体に関して理論計算(BLYP/6-31G^*)を行ってその性質を予想するとともに合成を検討した。その結果、含窒素芳香環のDiels-Alder反応を利用した8員環構築法によってこれらの骨格が形成できることがわかった。 また、これを利用して不飽和デルタファンの部分骨格を持ったピンセット型分子を合成し、その構造をX線結晶構造解析やNMRスペクトルから明らかにした。特にこのピンセット型分子はゲスト分子の包摂や解放に適した分子運動を起こすことがNMRスペクトルの温度変化から明らかとなった。また、この分子は適当なアクセプター分子と錯形成することを明らかとした。この結果はこのピンセット型分子が共役系アクセプターに対して有効なホストとなることを示唆している。
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