Research Abstract |
平成14年年度の防災意識調査などに引き続き,平成15年度は,1)避難の問題分析,2)復旧の問題分析,3)浸水危険性予測モデルの作成,に関して研究を遂行した。これらの課題は,2003年7月19日に発生した福岡県福岡市博多駅周辺地区の浸水被害とその経緯を詳細に調べることによって,解明された。そこでは,地下街だけでなくオフィスビルなど単体建物にある地下空間の浸水被害を実態調査することができた。研究実績をまとめると,次のようになる。 1)避難の問題分析 2003年7月19日の博多駅前地区の浸水は早朝におきた上に,地下空間において人的被害がなかったので,深刻な避難問題が発生しなかったと推測されるが,ヒアリング調査によって,(1)浸水は徐々におき,避難速度を上回ることが少ない,(2)地下空間には危険空間がある。床高が下がることが多い地下機械室や,車が浮いて避難の妨げになる地下駐車場である。(3)地下街には地上への連絡階段が多いが,階段入口には止水板と土嚢が積まれて,階段が通れない状態になり,浸水防止と避難通行が対立する。(4)局地的な河川堤防溢水の情報がなく浸水情報が遅れると,浸水防止が遅れる。 2)復旧の問題分析 博多駅周辺の地下街とビルでは浸水から復旧までの時系列的なデータが記録されており,その記録を入手できた。復旧は浸水防止と表裏一体で,浸水防止が成功すれば復旧も円滑に行われる。排水しても,電気設備の復旧に長くかかることがわかった。そしてエスカレータのピットが浸水経路になり,天井を伝って広範囲に漏水する被害もみられ,浸水経路が不明化する事もあった。 3)浸水危険性予測モデルの作成 このテーマに関しては,十分な成果があがったとは言えないが,(1)浸水のしやすさ,(2)防御のしやすさ,(3)避難のしやすさ,という3点から浸水危険性予測モデルが作成できると推測される。マウンドアップしやすい地下連絡階段に比べ,地下駐車場入口は浸水しやすい。また,隣接するビルの地下連絡口や地下街から浸水したり,地下の通路のネットワークの複雑さは,防御を難しくする。避難のしやすさでは,地下機械室や倉庫,更衣室などに安全計画が必要である。 博多駅前の浸水実態をしらべると,地下空間に通じる階段数の多さや複雑な通路ネットワークに対する研究が課題であることが判明した。次年度の課題となる。
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