2002 Fiscal Year Annual Research Report
照葉樹里山における植生回復過程と台風による大規模攪乱がもたらす種多様性維持効果
Project/Area Number |
14560029
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
前中 久行 大阪府立大学, 農学生命科学研究科, 教授 (80081553)
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Keywords | 攪乱 / 照葉樹林 / 個体群動態 / 根返り / 森林現存量 / 長期継続調査 / ギャップ / 里山 |
Research Abstract |
かって森林は植生遷移の経過を経て極相に達し安定すると考えられていたが,最近では,攪乱による変化と更新を部分的に繰り返しており、それゆえ攪乱の存在が生物の多様性の維持に重要であるとのダイナミックな見方にかわりつつある。1966年以後継続して長期調査されている水俣照葉樹林において台風によって、根返り、幹折れが発生した。台風による攪乱後ほぼ10年を経過した時点(2002年)での状況を調査し、林床での稚樹個体群の更新を台風による上層の森林現存量の変化すなわち林冠破壊の程度や光条件と関連して解析した。幹直径>5cmの大径木の現存量は,調査plot1,plot2,plot3でそれぞれ220,320,330[t/ha]であった。台風直前(1991)と比較するとそれぞれ55%,70%,85%に激減し,林床の光条件は相当改善されたと判断できた。plot1で32カ所,plot2で7カ所,plot3では6カ所の根返りを確認し形状の測定を行い根返り木の幹直径と根返りマウンドの大きさの関連を検討した。小サイズの樹木のマウンドはいずれも小さいが,大サイズの樹木のマウンドは大小様々であった。台風以後の中径木(胸高直径≧1.0cm)および小径木(地上30cmでの幹直径≧0.5cm)の幹直径の成長率の全個体平均値は、0.04以上[1/year]であった。台風による攪乱(1991年)以前の0.02以下[1/year]より増加し,上層にギャップが形成され林床が明るくなった効果と考えられる。中径木および小径木の成長率は、その近傍100m^2毎の大径木の現存量と相反する関係があり、攪乱が林床での植物の成長と種多様性の回復に効果を及ぼしていることが明らかになった。林床における光量の測定値は極めて変動が大きい。今後、光量とその変動の総合方法を確立して、近傍における小径木の成長率との関係を明らかにする。
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[Publications] 市川貴美代, 前中久行: "絶滅危倶植物ツチグリ(Potentilla discolor Bunge)のフェノロジーから見た管理方法について"日本緑化工学会誌. 28(1). 43-48 (2002)
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[Publications] 村上健太郎, 松井理恵, 前中久行, 森本幸裕: "京都市内孤立林におけるシダ植物の種組成と微地形との関係"日本造園学会誌ランドスケープ研究. 66(5)(印刷中). (2003)