2002 Fiscal Year Annual Research Report
クロダイ放流が天然資源増大に及ぼす実証遺伝学的研究
Project/Area Number |
14560152
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
海野 徹也 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 助教授 (70232890)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島田 昌之 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 助手 (20314742)
坂井 陽一 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 助手 (70309946)
中川 平介 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 教授 (00034471)
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Keywords | クロダイ / 放流種苗 / 遺伝的多様性 / DNAフィンガープリント / マイクロサテライト / 放流効果 |
Research Abstract |
まず、広島湾におけるクロダイ人工放流種苗の遺伝的変異性と野生魚への影響を評価するため、広島県湾島野生2才魚、広島湾似島野生1才および0才魚,似島に放流した放流種苗と放流後に再捕した放流種苗,ならびに雌雄1対1交配より得た全同胞魚について、DNAフィンガープリントの比較を行った。バンド共有度(BSI)を基準にすれば遺伝的変異性は宮島野生魚、似島野生魚,放流魚、放流後に再捕された放流魚,全同胞の順で高いことが判った。放流魚のBSIは宮島産ならびに似島産野生魚(1才、0才)に比べて若干高めであったが,全同胞群に比べると遥かに低かった。さらに,長年放流が行われてきた似島における野生魚と宮島野生魚の間で遺伝変異に顕著な差異は認められなかったことから,似島では遺伝的多様性をある程度具備した種苗が放流されてきたと考えられる。 次に、マルチローカスを検出するDNAフィンガープリント法に代わる高感度DNAマーカー、マイクロサテライトの開発に取り組んだ。すなわち、クローニングにより得られた(CA)n、(GT)n陽性クローンの配列を決定し、クロダイの9種類のMSを単離した後、MS領域近傍にプライマーを設計した。人工交配により作出した雌雄1対1交配群27尾のMS領域をPCR法により増幅後、遺伝子型がメンデルの遺伝様式に従っているか否か確認した。その結果、9遺伝子座のうち8遺伝子座はメンデルの遺伝様式に従っていた。また単離されたMSのうち6遺伝子座について、放流が行われている海域である広島市似島大黄湾で捕獲した天然集団、放流の影響が少ないとされる韓国麗水湾で捕獲した天然集団、および放流用人工種苗集団各50尾を同様に電気泳動し、各集団の対立遺伝子頻度、平均ヘテロ接合体率観察値(Ho)、期待値(He)等を求めた。人工種苗集団および広島天然集団の多型性を調査した結果、全ての遺伝子座において変異が確認され、有効なマーカーになりうることが示唆された。また、平均対立遺伝子数は、人工種苗、似島産天然集団、韓国麗水産天然集団でそれぞれ10.3、12.2、11.0であり、Heはそれぞれ0.776、0.793、0.776であった。
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Research Products
(1 results)