2002 Fiscal Year Annual Research Report
水産食品におけるリステリア菌の動態解明と制御に関する研究
Project/Area Number |
14560166
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
川合 祐史 北海道大学, 大学院・水産科学研究科, 助教授 (60195039)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
猪上 徳雄 北海道大学, 大学院・水産科学研究科, 教授 (60002086)
山崎 浩司 北海道大学, 大学院・水産科学研究科, 助教授 (40250500)
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Keywords | Listeria monocytogenes / 水圏環境 / イカ塩辛 / ストレス耐性 / VBNC |
Research Abstract |
水圏環境中におけるリステリア菌Listeria monocytogenesの動態を明らかにするため、北海道南部の河川水と沿岸海水中における分布を調べたところ、比較的有機物汚染度の高い河川水からL.monocytogenesが検出された。また、L.monocytogenesは海水中からは検出されなかったが、海水中でも低温で長期間コロニー形成能が維持され、一方、生細胞の直接蛍光判定計数法と平板培養法による生菌数の比較によって、海水中でVBNC(Viable But Non-Culturable)化細胞へ移行する可能性も示唆された。さらに、海水のような貧栄養状態に置いた細胞では各種ストレス(低温、加熱、低pH、凍結、抗生物質)に対する抵抗性が新鮮培養細胞よりも高まることが明らかとなった。これらのストレス耐性は細胞膜の脂肪酸組成や細胞表層の構造変化、ストレスタンパク質の発現などに起因する可能性が考えられた。このように水圏環境でコロニー形成能を有したまま生残する細胞は食品保蔵に一般的に使用される致死的条件に対する抵抗性が高く、水圏環境に存在するL.monocytogenesが水産食品由来食中毒に対する潜在的危険因子となりうることが推察された。 また、L.monocytogenesの非加熱水産食品における動態を明らかにするため、イカ肉に10^6CFU/gになるように接種して挙動を調べたところ、L.monocytogenesは冷蔵(6℃)条件下でも旺盛に増殖し、6%以上の食塩添加により増殖抑制(静菌化)されること、また、イカ肉にイカ肝臓を5%添加しても増殖するが食塩と肝臓の共存区では急速に生菌数が減少することが観察された。よって、イカ塩辛においては食塩と肝臓を添加し十分な熟成期間を付与することによって、危険因子が除去されるものと判断された。
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