2003 Fiscal Year Annual Research Report
野生動物および動物園動物の保護増殖計画上問題になる寄生線虫症に関する疫学的研究
Project/Area Number |
14560271
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Research Institution | Rakuno Gakuen University |
Principal Investigator |
浅川 満彦 酪農学園大学, 獣医学部, 助教授 (30184138)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷山 弘行 酪農学園大学, 獣医学部, 教授 (90133800)
辻 正義 酪農学園大学, 獣医学部, 助教授 (10150088)
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Keywords | 外来種の線虫 / 動物園展示動物 / 高病原性線虫 / 動物園検疫 / 濃厚感染地域 / 分子生物学的同定手技 / 野生動物医学センター / 生態学と獣医学との連携 |
Research Abstract |
前年に引き続き、各種野生および動物園動物の展示の保護・衛生に関わる寄生線虫症を含めた感染症全般の文献的調査を行い、総説論文をまとめた[2,7,10,18、図書2,3]。特に、日本における鳥類の線虫類の報告は、これまで60種の宿主についてしか記録が無く[17]、これまで日本に記録されている1割程度でしかないことが再確認された。そのため、今年は鳥類について、関東地方に棲息する外来種ソウシチョウ・ガビチョウ(独立法人/森林総合研究所との共同研究)、ラムサール登録湿地を多く含み、現在、トキの野生復帰を目指すむ新潟での野鳥調査(新潟市および新潟県愛鳥センターとの共同研究)、ニホンコウノトリの野生復帰を目指す西日本での動物園展示施設での調査(王子動物園、天王寺動物園、豊岡コウノトリセンターなどとの共同研究)などを実施し、いくつかの原著・短報告を公表した[4,11,21]。この中には、病原性が高い線虫Epomidostomumnはじめいくつかの重要種が記録された。野生鳥類については、環境省からの依頼の感染症調査も並行して行なわれており、次年度もますます情報の蓄積が期待される。また、哺乳類では、関東地方の動物園で飼育されていたハイラックスから国内ではじめて、ギョウチュウ類に近縁な線虫類を検出したが、これは動物園検疫の重要性を再確認させる記録となった[23]。ニホンザルでは房総半島に生息する個体群について調査をおこない、一部地域で、人への感染可能なベンチュウの濃厚感染地域が見られたこと、外来種であるタイワンザルにも旋尾虫が検出されたことなどの結果を得た[22]。以上のように、鳥類・哺乳類の外来種に関する寄生虫症の研究が進行しつつあるが、これは、他の大学・研究機関では行ない得ない先駆的なもので、今回は、これを一般書で解説し[図書1]、社会への啓発にも努めた。 さらに、今年度は、これまでの形態的な検討に加え、分子生物学的な手法も同定手技に加えた報告もいくつか公表された[13,14]。来年度から、文部科学省ハイテクリサーチ補助金により、「野生動物医学センター」が運用されるが[8]、その目的は、以上のような研究を通じ、生態学と獣医学との連携を模索することが一つである[9,15]。
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Research Products
(26 results)
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[Publications] 浅川満彦: "野幌森林公園における寄生虫相の研究-野幌森林公園における野生小哺乳類の内部寄生蠕虫相の研究概要とその野生動物医学教育における応用の可能性"野幌研究. 2. 19-27 (2003)
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[Publications] 浅川満彦: "国際獣類会議で報告された感染症・寄生虫症の研究動向"JVM(獣医畜産新報). 56. 243-246 (2003)
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[Publications] Ishih, A.: "Hymenolepis pseudodiminuta Tenora et al.1994 from Apodemus speciosus and H.diminuta : a comparison of experimental infections in rats."Parasitol.Res.. 89. 297-301 (2003)
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[Publications] 吉野智生: "日本における外来鳥類ガビチョウGarrulax canorusおよびソウシチョウLeiothrix lutea(スズメ目:チメドリ科)の寄生虫学的調査"日本鳥学会誌. 51(2). 39-42 (2003)
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[Publications] 浅川満彦: "「動物園の生物学2:教育の場としての動物園」参加報告"Zoo and Wildlife News(日本野生動物医学会). (16). 11-12 (2003)
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[Publications] Asakawa, M.: "A new host and locality records of a spirurid nematode species, Protospirura muricola, from Gabonese wild murids."Biogeography. 5. 67-70 (2003)
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[Publications] 浅川満彦: "動物園水族館雑誌上に掲載された展示動物と野生動物における感染症発生記録"酪農学園大学紀要,自然科学. 28(1). 79-84 (2003)
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[Publications] 浅川満彦: "酪農学園大学新家畜病院の『野生動物管理棟』について"北海道獣医師会雑誌. 47. 229-230 (2003)
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[Publications] 浅川満彦: "英国の野生動物医学専門職大学院における爬虫類と鳥類の臨床教育について"北海道獣医師会雑誌. 47. 382-385 (2003)
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[Publications] 浅川満彦: "第83回米国哺乳類学会要旨集からの感染症関連題目"北海道獣医師会雑誌. 47. 385-386 (2003)
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[Publications] 中村 茂: "新潟産野生鳥類の寄生蠕虫類の記録"日本鳥学会誌. 52. 116-118 (2004)
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[Publications] 浅川満彦: "野生動物医学的ネットワーク構築の必要性:ラムサール条約登録湿地「佐潟」とその周辺湖沼群の水鳥類保護活動の例から"ワイルドライフ・フォーラム. 9(1)(印刷中). (2004)
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[Publications] 大塚浩子: "マレーバク(Tapirus indicus)糞便中に認められた虫卵のCOX1およびITS領域塩基配列を指標とした寄生蠕虫類同定の試み"野生動物医学会雑誌. 9(1)(印刷中). (2004)
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[Publications] Yohei Matoba: "Detection of taenid species (Taenia taeniaeformis) from a feral raccoon (Procyon lotor) and its epidemiological meanings"Mammal.Study. 28. 157-160 (2003)
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[Publications] 浅川満彦: "野生生物の感染症対策に適した人材育成を"科学(岩波書店). 74(1). 10-11 (2004)
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[Publications] 浅川満彦: "書籍紹介「線虫の生物学」"日本生物地理学会報. 58. 125 (2003)
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[Publications] 浅川満彦: "日本で記録された鳥類と哺乳類の寄生線虫類"日本生物地理学会報. 58. 79-93 (2003)
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[Publications] 浅川満彦: "エキゾチック・アニマルの輸入状況とその感染症・寄生虫症に関する最近の動向"酪農大紀要,自然科学. 28(2)(印刷中). (2004)
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[Publications] 浅川満彦: "書評「線虫の生物学」"Zoo and Wildlife News(日本野生動物医学会). (17). 44-45 (2003)
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[Publications] 浅川満彦: "ツル類の感染症とその対策"野鳥. (671). 13 (2004)
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[Publications] Azusa SATO: "Parasitic helminths from exhibited avian species kept in Kinki District in Japan"JPn.J.Zoo Wildl.Med. 9(in press). (2004)
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[Publications] 里吉亜也子: "房総半島に生息するニホンザル(Macaca fuscata)の寄生虫症および感染症に関する予備調査"野生動物医学会雑誌. 9(印刷中). (2004)
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[Publications] 斉藤理恵子: "国内の飼育下ケープハイラックスに認められた寄生蠕虫3種とEimeria属原虫の初記録"野生動物医学会雑誌. 9(印刷中). (2004)
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[Publications] 浅川満彦: "野ネズミと線虫による宿主-寄生体関係の生物地理.(増田隆一編)「動物地理の自然史」"北海道大学図書刊行会,札幌(印刷中). (2004)
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[Publications] 浅川満彦: "鳥には虫がいっぱい?鳥と寄生虫の腐れ縁.森の野鳥に学ぶ101のヒント"日本林業技術協会(印刷中). (2004)
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[Publications] 浅川満彦: "野鳥もかかれば大量死?鳥の感染症の話.森の野鳥に学ぶ101のヒント"日本林業技術協会(印刷中). (2004)