2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14572269
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
島田 啓子 金沢大学, 医学部, 助教授 (60115243)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
亀田 幸枝 金沢大学, 医学部, 助手 (40313671)
五十嵐 透子 上越教育大学, 学校教育学部, 助教授 (90293349)
坂井 明美 金沢大学, 医学部, 教授 (90115238)
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Keywords | 流産 / 精神的苦痛 / 尺度 / 悲嘆 / 女性 |
Research Abstract |
我が国では,流産した女性に対する支援の必要性について諸外国ほど認識されておらず、支援システムも十分でない。そこで研究目的は流産した女性の精神的苦痛に関する体験について記述し,その支援の一環として精神的苦痛尺度を考案することである。 初年度は,文献レビューならびに流産に関与する要因の仮説の立案を行い、3例の流産体験をもつ女性からのインタビューを分析した。その結果,これまでの質的研究から報告されている悲しみ,嘆き,罪悪感情,自己価値の低下など類似した精神的苦痛内容が抽出された。またこれまでに報告されてきた多様な悲嘆反応に加えて,流産後の1年を経過した時点でも,その精神的苦痛や衝撃は軽減されにくいことが明らかになった。さらに入院中に受けた医療処置やケアの不足に関連した心理的外傷体験も大きく,医療者の言動や流産の処置に伴う環境状況など臨床における配慮や改善点が示唆された。 流産した女性が医療処置を受けた後は,身体面においては正常な回復経過にあった。しかし退院後は夫などの限られたサポート環境しかなく,心理的には孤立した状況におかれていることが推察された。さらに退院後の孤立した状況にある女性は,心身の苦痛を軽減し回復するための手立てもなく,日々,流産時の苦痛と罪悪感,葛藤が持続していることも明らかになった。一方でこうした精神的苦痛の激しい事例とは対照的に,流産したことにそれほど衝撃や苦痛を体験していない事例もあった。悲嘆反応が少なく精神的苦痛も小さかった事例では,婚姻関係にあるパートナーとの心理的結びつきである親密性がそれほど強くないことや経営する事業への多忙さなどが背景にあり,妊娠の継続や子供が欲しいという願望や期待感は強くないことなどが流産体験による心理的苦痛レベルの低さと関連していることが示唆された。事例間のこうした苦痛の違いをもたらす背景要因は事例ごとに詳細に検討されなければならない。同時に抽出された体験内容をもとに、次年度は精神的苦痛の程度を測定できるための尺度内容とその構成について予備調査し検討する。
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