2005 Fiscal Year Annual Research Report
細胞の形態形成、接着、運動におよぼす定常磁場の効果
Project/Area Number |
14580818
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
東 照正 大阪大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (80116087)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松浦 成昭 大阪大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (70190402)
竹内 徹也 大阪大学, 低温センター, 助手 (90260629)
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Keywords | ヒト脳腫瘍細胞 / 定常磁場 / 磁場配向 / 遊走 / 細胞接着 / 細胞浸潤 / 細胞増殖 / 反磁性 |
Research Abstract |
近年、人体に対する磁場影響についての実験的あるいは疫学的研究が盛んに行われ、多くの知見を得ている。にもかかわらず、磁場が悪性腫瘍の臨床的発症を促すか否かの論争には、未だ決着が付いていない。 われわれは「細胞の形態形成、接着、運動におよぼす定常磁場の効果」について調べた。それは、仮に電離放射線(エックス線やガンマ線)のような遺伝子レベルでの影響がなくとも、悪性腫瘍の転移段階への影響があれば、臨床的発症率が変わるのではないか、という発想に基づいている。悪性腫瘍の転移には、細胞の形態形成、接着、運動(遊走)といった要素が関与しているため、複数の腫瘍細胞(A172、A175、T98G、YKG-1)のそれぞれの機能を定常磁場下で観察した。 特に、Wound Assay法を用いた脳腫瘍細胞の形態形成、接着、運動(遊走)の観察では、有意の磁場影響を確認できた。このとき、骨格タンパク質などの細胞内成分の偏在が起こることが、免疫染色法で観察された。定常磁場によるこれらの影響は、脳腫瘍細胞によって抑制・促進の方向が異なり、また、その程度にも大小があった。これらの磁場影響の多様性が何に起因するのかを確定することが、今後の課題であろう。 ところで、2006年に世界保健機関(WHO)が電磁波に関する環境保健基準(EHC)を公表する。その基本精神は"Prudent Avoidance"(賢明な回避、あるいは、慎重な回避)に基づく「予防原則」の考え方である。その背景には、電磁波影響の有無に関して明確な結論を得られないことがあろう。われわれも、電気学会電磁界生体影響問題調査特別委員会、日本学術会議電波科学研究連絡委員会K分科会(生体・医学に係わる電磁波)、国際電波科学連合(URSI)国内委員会(Commission-K TOKYO Chapter)の元で、調査研究に協力してきた。 過去の科学論文を詳細に検討すると、疫学研究で電磁波影響を確実には否定できない。しかし、実験研究では明確な作用機序を明らかにすることができない。この微妙な乖離を埋めて、将来さらに明確な基準を提示できるようにするためには、上述のような発想、つまり、遺伝子レベルでの影響がなくとも、転移段階で促進・抑制があれば、悪性腫瘍の臨床的発症率が変わるのではないか、といった視点も必要になるであろう。
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