2002 Fiscal Year Annual Research Report
後期ウィトゲンシュタイン哲学における反自然主義的実在論の可能性
Project/Area Number |
14710004
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
大辻 正晴 熊本大学, 文学部, 助教授 (00285074)
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Keywords | ウィトゲンシュタイン / 言語 / 意味 / フレーゲ / 実在論 / 自然主義 / 治療的読解 / 心 |
Research Abstract |
今年度は、補助金によって図書などをある程度充実させることができたが、研究の成果を論文などにまとめて公表する段階には至らなかった。15年度には論文の形で研究の成果を発表できるようにしたい。 今年度は、ウィトゲンシュタイン『哲学的探究』を演習で取り上げて研究し、言語ゲーム、使用、生活の形という概念の相互関係について理解を深めた。とりわけ、ウィトゲンシュタインにおいて言語ゲームが人間のさまざまな生活の形と分離不可能なものと把握されていることは重要と考える。一方で、生活の形という概念はしばしばウィトゲンシュタイン哲学の自然主義的解釈へと導くのだが、この点については違う方向で考えてゆきたい。(ウィトゲンシュタインにおける「自然の事実」の位置づけが問題となろう。) 規則や規範をめぐる問題について、今年度は十分な検討ができなかった。今後、意味や規範を自然的事実に還元しようとする自然主義の思考法を乗り越える方策を、SellarsやMcDowellの研究を参考にしつつ模索したい。また意味についての反実在論に関連して、Diamondの言うウィトゲンシュタインのrealismとは何かを明瞭にする必要があるだろう。 なお、今年度は現代の心の哲学について基本的な理解を得た。現代の心の哲学の主流は、機能主義に代表される物理主義や行動主義のような自然主義的傾向である。一般に、ウィトゲンシュタインの心の哲学も、心の自然主義的把握へと繋がるものと受け取られているが、この点は疑問である。ここで、心的態度の帰属を行動の解釈とみなすDennettらのいわゆる解釈主義とウィトゲンシュタインの考えとの異同を、明らかにする必要があると思われる。
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