2003 Fiscal Year Annual Research Report
後期ウィトゲンシュタイン哲学における反自然主義的実在論の可能性
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14710004
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
大辻 正晴 熊本大学, 文学部, 助教授 (00285074)
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Keywords | ウィトゲンシュタイン / 意味 / 実在論 |
Research Abstract |
今年度は研究以外の諸業務に忙殺され、遺憾ながら研究面における著しい進展はなかった。 後期ウィトゲンシュタイン哲学がいかなる意味で実在論なのか。これにかんして、さしあたり「外の観点」の拒否という点が挙げられると思う。ウィトゲンシュタインにおいて、言語ゲームにおける語の使用から独立に意味は成立せず、我々が語るものに言語ゲームの外から言及することはできない。それゆえ後期ウィトゲンシュタインにおいて哲学とは、我々の言語ゲーム内部での語の使用にかんする内在的な文法的探究である外ない。(だから心についても、言語ゲームにおける心的な語の使用こそが焦点となる。この点に、心的なものについての理論を構築しようとする現代の心の哲学との大きな違いが存する。) なおこの点に、フレーゲや『論考』との連続牲が存する。大まかに言って、フレーゲや『論考』の記号言語は、思考可能な一切を表現しうる普遍言語であって、それゆえ、その外に意味の成立する余地はなかった。 すると、哲学的自然主義(物理主義や消去主義に代表される)は、それが我々の日常の語りを自然科学の語りに還元ないし置換する試みであるかぎり、まさに外の観点に立つものと言えよう。それは、我々の言語ゲームの外に立ってなお、我々が語るものについて言及しうるかのように考える。こうした外の観点を拒否する、反自然主義的な、しかもプラトン主義的でない実在論を、後期ウィトゲンシュタインのうちに見いだしうると予想している。
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