2015 Fiscal Year Annual Research Report
磁性ヘテロ構造におけるスピン軌道相互作用と異方性がもたらす輸送現象の理論
Project/Area Number |
14J08063
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
千葉 貴裕 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | スピントロニクス / 磁性絶縁体 / 反強磁性結合 / 磁気共鳴 / 磁気緩和定数 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、磁気抵抗素子のための新規材料としてフェリ磁性や反強磁性秩序を有する物質群を中心に研究を進めてきた。これまでのスピントロニクス研究では反強磁性金属の磁気抵抗効果(静的特性)が主題であり、反強磁性体の磁気緩和機構(動的特性)はあまり調べられていなかった。しかし、磁気緩和定数等の動的特性は、今後反強磁性体を利用した素子で磁化スイッチングを行うときに必須となる情報である。 本研究では、磁気メモリ素子の構造によく見られる磁性体/非磁性体/磁性体の磁性三層構造における磁性絶縁体の磁気緩和機構を理論的に研究した。素子構造としては、漏れ磁場を抑えるために二つの磁性絶縁体が非磁性金属を介して反強磁性的に結合した系を想定した。そして、磁性三層構造での磁気緩和機構を解明するために高周波磁場による磁気共鳴モデルを構築した。通常、磁気緩和定数の情報は磁気共鳴実験における高周波磁場の吸収曲線から得られる。今回のモデルでは磁気共鳴に用いる印加磁場により反強磁性的に結合した系は非共線的な磁気構造に移行する。申請者は、スピン拡散モデルとスピンポンピング理論を用いて非共線的な磁気構造における磁化ダイナミクスの方程式を定式化した。その結果、非共線的な磁気構造に起因した新たな磁気緩和機構を発見し、その磁気共鳴モード及び外部磁場依存性を明らかにした。更にこの理論は磁性体中のスピン拡散を考慮することで強磁性金属の系にも適用できる。定式化したLLG方程式を実際の物質パラメータを用いて解くことで、実験との比較を行った。その結果、理論と先行研究における実験データとの高い整合性が得られた。 本研究の成果は、米国科学誌「Physical Review B」のオンライン版(2015年8月5日付)に掲載されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、現象論的なアプローチにより磁性絶縁体を含んだ多層系の磁化ダイナミクスをモデル化できた。しかし、目的としていた非磁性金属/磁性絶縁体の接合界面でのスピン軌道相互作用を取り込んだスピン輸送の微視的理論の構築には至らなかった。この理論構築は現在進行中であり、今後の優先課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
非磁性金属/磁性絶縁体の接合界面でのスピン軌道相互作用を取り込んだスピン輸送の微視的理論の構築を行う。その上で、磁性絶縁体としては強磁性体に限らず反強磁性体等の他の磁性体も視野に入れて研究を行う。また、それらの系での磁化ダイナミクスを研究することで、構築した理論の磁気メモリ素子等への応用も検討していく予定である。 本年度の研究で得られた結果は、学術論文及び国内学会・国際会議等で発表する予定である。
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Research Products
(13 results)
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[Presentation] Optical precession mode modified by a d.c. current in synthetic antiferromagnet2016
Author(s)
K. Tanaka, T. Moriyama, M. Nagata, H. Mizuno, T. Seki, K. Takanashi, T. Chiba, S. Takahashi, Gerrit E. W. Bauer, and T. Ono
Organizer
The 13th Joint MMM-Intermag Conference
Place of Presentation
San Diego, USA
Year and Date
2016-01-11 – 2016-01-15
Int'l Joint Research
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