2005 Fiscal Year Annual Research Report
紙素材文化(文書・典籍・聖教・絵図)の年代推定に関する基礎的研究
Project/Area Number |
15200058
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
富田 正弘 富山大学, 人文学部, 教授 (50227625)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
湯山 賢一 独立法人国立博物館, 奈良国立博物館, 館長 (00300690)
永村 眞 日本女子大学, 文学部, 教授 (40107470)
綾村 宏 奈良文化財研究所, 歴史遺産研究部, 部長 (20000507)
藤井 譲治 京都大学, 大学院・文学研究科, 教授 (40093306)
大藤 修 東北大学, 大学院・文学研究科, 教授 (20110075)
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Keywords | 文書料紙 / 楮紙 / 斐紙 / 竹紙 / 宜紙 / 米粉 / 非線維物質(不純物) / 年代判定 |
Research Abstract |
平成17年度は当該科研の第3年度目にあたるが、古文書等の料紙原本調査は、国内については東寺百合文書(京都府立総合資料館)・東大寺文書(東大寺図書館)・広橋家記録(国立歴史民俗博物館)・醍醐寺文書(醍醐寺)・上杉家文書(米沢市上杉博物館)・白河結城文書(白河市教育委員会)・中条家文書(山形大学図書館)・島津家文書(東京大学史料編纂所)等について実施し、主として中世文書のデータを6千件程採取することができた。そのデータは、富山大学でアルバイトの手で順次コンピュータに入力し終えた。これらの調査で分かってきたことは、楮の繊維を良く洗って製作する檀紙系料紙は鎌倉・南北朝期でほぼ終わり、南北朝・室町期以降は繊維の不純物を意識的に残す強杉原、漉返や不純物に米粉を多く入れる杉原紙に変わること(もちろん檀紙系の紙も作られているが比率は小さい)、江戸期の奉書紙は良く洗った繊維に大量の米粉を入れたもので、美濃紙は強杉原と同じく不純物を意識的に残すものということが、ほぼ確定的に言えるようになった。これにより、製作技術の変遷と対応した料紙使用の変化を見通すことができるようになった。今後は、江戸時代の上質の大鷹檀紙の成分が奉書紙とどう違うのか検討していきたい。 本年度は、中国の共同研究者である北京市の清華大学副教授劉暁峰の案内で、同大学図書館所蔵の雲南省彝族土地関係文書および東北師範大学図書館・西北大学図書館・上海市博物館等の経典・典籍の料紙調査を行った、合わせて蔡倫以前の前漢代の紙の見学および安徽省の宣紙製作の見学を行った。中国側のガードが固くて、充分な成果とは言えないが、清代の雲南省彝族土地関係文書の料紙が斐紙系統の紙であったことが、帰国して繊維を化学分析した結果判明したのは収穫であった。沖縄県は前近代においては琉球国であり、日本以外の東アジア地域であり、文書等の料紙も日本とは異なっている。琉球国王が国内の官僚や神女の任命に用いる辞令書という文書は、現在ほとんど裏打ちが施され、紙質がよく分からない状態にある。従来の指摘では、唐紙であろうとする見解が出されていたが、根拠は十分ではなかった。今年度、沖縄県立博物館・石垣市八重山博物館および九州国立博物館の辞令書約80通を調査した結果、ほぼ竹紙であることが分かり、中国からの輸入品の紙で官僚の任命が行われていることが明らかになった。ただ17世紀初頭の島津氏による侵攻以前には、楮紙を用いたものも見られ、日本の紙をも使用していることも確認できた。地元で作成された文書の料紙は概して品質が悪く、芭蕉紙や青雁皮紙と思われる料紙も何点か見られた。今後、宮古島や奄美大島などの辞令書も追加して調査していきたい。現在、最終年度の計画を1年延長する申請を出しているが、それが認められれば、韓国・中国・琉球と日本の紙流通関係の解明にも力を入れて行きたい。
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