2005 Fiscal Year Annual Research Report
干潟域の低次生産過程における親生物元素循環の定量化と生態系モデルの構築
Project/Area Number |
15201001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
門谷 茂 北海道大学, 大学院・水産科学研究院, 教授 (30136288)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
多田 邦尚 香川大学, 農学部, 教授 (80207042)
柳 哲雄 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (70036490)
堤 裕昭 熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (50197737)
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Keywords | 干潟 / 親生物元素 / クロロフィルa / 底生珪藻 / 二枚貝 / 安定同位体比 / 沈降粒子 / 堆積物 |
Research Abstract |
本研究フィールドに生息する底生珪藻の動態と環境諸因子の因果関係を解析するために、それぞれの項目間の相関分析を行ったところ、すべての定点において、日射量、気温、表泥温度、間隙水中の栄養塩濃度に正の相関関係が得られ、沼奥部・沼中央部では水温と間に正の相関関係が、水柱の栄養塩濃度、塩分との間に負の相関関係が得られた。その結果、火散布沼に生息する底生珪藻は、幅広い光・温度条件に適応し、彼らが利用する栄養塩の起源が外洋水や堆積物からの溶出である可能性があると考えられた。また、水柱のChl.a現存量が堆積物表層よりも極小(0.1〜9.1mg/m^2)であったことに加え、24時間連続採水の分析結果から、干潮の時間帯前後に表層堆積物が巻き上げられていたことから、火散布沼の生物生産は堆積物表層の底生珪藻が支えていると考えられた。また、既往の文献値と比較すると、火散布沼ではかなり高密度で存在していることがわかった。 次に、火散布沼に生息する底生珪藻の増殖特性を把握するために、堆積物試料から、干潟における夏季特定優占種であったNitzchia sp.と、すべての定点で年間優占種であったNavicula sp.を単離し数回維持培養を繰り返し、単一種の株を作った。その株を用いて、光、塩分、栄養塩濃度をそれぞれ5段階、温度を8段階変化させ8〜13日間培養しそれぞれの比増殖速度を求めた。室内培養実験から、比増殖速度は、Nitzschia sp.はμ=0.0〜0.80/day、Navicula sp.ではμ=0.0〜1.00/dayあるごとがわかった。両種共に-5℃、0μE/m^2sという条件では成長が見られず、Navicula sp.は、200μE/m^2s 15℃・25psu条件で、Nitzschia sp.は200μE/m^2s 15℃・30psu条件で最大の比増殖速度を示した。また、Navicula sp.は-3℃でも成長が見られたが、Nitzschia sp.は見られなかった。 本実験結果と既往の文献値を比較したところ、研究フィールドに生息する底生珪藻は、強光・高塩分条件においても成長し、低温から高温という幅広い温度条件に適応しており、好冷性を持ちながら、温帯域に生息する底生珪藻に似た特徴を持つと考えられた。また、河川流入量が極小であるという現場の特徴から、年間優占種のNavicula sp.は、一般的な河口域干潟に生息する底生珪藻や、夏季特定優占種のNitzschia sp.に比べ、栄養塩類に対して短時間の変動よりも季節変動に適応した動態を示している可能性があり、その生理的特徴の相違から、優占する場所・季節が異なっていたと考えられた。
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Research Products
(9 results)