2006 Fiscal Year Annual Research Report
エジプト・アラブ共和国 アブ・シール南丘陵遺跡の保存整備計画立案のための研究
Project/Area Number |
15251001
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
吉村 作治 早稲田大学, ユネスコ世界遺産研究所, 教授 (80201052)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 二郎 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (70186849)
中川 武 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (30063770)
柏木 裕之 早稲田大学, エジプト学研究所, 講師 (60277762)
西浦 忠輝 国士舘大学, イラク古代文化研究所, 教授 (20099922)
中井 泉 東京理科大学, 理工学部, 教授 (90155648)
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Keywords | 古代エジプト / アブ・シール南 / 新王国時代 / エジプト学 / 石積み遺構 / 化学分析 / 保存修復 / 整備計画 |
Research Abstract |
平成18年度にアブ・シール南丘陵遺跡の保存整備案策定のために実施した調査・研究の成果について概要を報告する。 まず、前年度の調査で実施した石積み遺構の劣化を防ぐためのキャッピング試験の結果を受け、古代エジプト最古級の石造建造物とされる石積み遺構の保存作業を行った。遺構の上面はタフラとよばれる泥岩質の粘土に砂、消石灰を混合したモルタルで覆って保護し、側面には新たに保護壁を築き、この壁で外側から完全に覆ってしまう措置を採った。この保護作業は遺構を発掘した研究者が保存問題においても主体的に取り組み、具体的な作業を迅速かつ一貫して成し遂げた事例と言える。 次に、これまでの発掘調査で出土した遺物の保存修復作業を行った。丘陵の斜面から検出された岩窟遺構(AKT01)からは数体の塑像が出土し、エジプト美術においても稀な造形として貴重である。今年度はこれらの保存修復作業を実施し、合わせて、丘陵頂部の石造建造物に由来する石灰岩製レリーフおよび土器について保存修復処置を講じた。 考古学、建築史学の分野においても重要な成果を挙げることができた。石積み遺構の南側では中王国時代の祭祀活動に伴う供物の廃棄跡と考えられる土器集中が確認されたが、今期調査においてこれらを完掘し、当時の祭祀活動の様相を伝えるまとまった資料を得ることができた。また、丘陵斜面での発掘では、石造建造物の建材、レリーフ片、など復元研究に寄与するデータが得られた。 分析化学の分野では、平成15年度の第12次調査で出土した集団埋葬内に納められたエジプト最古級のガラスビーズなどの分析が実施された。特にガラスビーズはガラス製であることが科学的に証明され、とくにカルシウムを高濃度含んでいることが明らかとなった。これは、エジプトの初期ガラスの研究に大きく貢献するものである。
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Research Products
(32 results)