2003 Fiscal Year Annual Research Report
北部ルソン島ラロ貝塚群の発掘調査-先史狩猟採集社会と農耕社会の相互関係の解明
Project/Area Number |
15251005
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
|
Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
小川 英文 東京外国語大学, 外国語学部, 助教授 (20214025)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
富岡 直人 岡山理科大学, 理学部, 助教授 (90241504)
小池 裕子 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 教授 (40107462)
青柳 洋治 上智大学, 外国語学部, 教授 (60146800)
奥野 充 福岡大学, 理学部, 講師 (50309887)
|
Keywords | 狩猟採集社会の存続 / 農耕社会との食料・労働力の交換 / 相互依存関係の歴史過程 / 地域的土器編年体系 / GIS地図情報データベース / AMS14C年代測定法 / 安定同位体古食餌分析 / 古環境復元 |
Research Abstract |
本年度はSARSの影響で、予定していたすべての調査・研究を実施できなかったが、日本とフィリピンの研究者が合同で以下の成果を残すことができた。 1.ラロ遺跡群分布範囲のなかで、カガヤン川東岸丘陵地帯に分布する洞穴遺跡群の分布調査と遺物確誰のための試掘調査を実施した。これまでの調査では人間居住の痕跡を残す洞穴はマバゴッグ洞穴一ヵ所のみである。より多くの洞穴遺跡を確認するため、洞穴分布地図を作成したフィリピン天然資源省の協力を要請し、森林管理官に同行してもらい、迅速な洞穴遺跡の発見が可能となった。3ヶ所の洞穴で試掘調査を実施し、剥片石器・土器等の遺物を採集した。 2.現在でも貝採集が続けられるカタヤワン貝塚で貝層全体にわたるボーリング調査を実施した。その結果、これまで地表面に散布する貝の分布範囲で捉えていた遺跡範囲がさらに広がり、長さ2kmにも及ぶことが明らかとなった。この調査によって貝層全体の法量がより正確に算出でき、遺跡造営期間や生業全体における貝の位置づけを推定する基礎資料が得られた。また採集された土器からこの貝塚が2000年前から造営され続けていることも明らかとなった。 3.GISを導入し、各遺跡の出土遺物に関する地図データベースの作成とその視覚的表現に向けた作業を開始した。また同時に、衛星写真とGPSデータを連動させて、丘陵地帯の地図作成、遺跡分布図、土地利用図の作成を開始した。 4.発掘調査で得られた人骨の安定同位体分析による古食餌分析と動物骨によるAMS14C年代測定を行った。 5.これまでの出土遺物の研究を統合してラロ貝塚群の地域的土器編年体系を確立した。すなわち土器出現以前から貿易陶磁までの6期を出土遺物によって画することができた。また当該地域の土器の出現は4000年前以降であることが明らかとなった。
|
Research Products
(10 results)
-
[Publications] 小川 英文: "ラロ貝塚群出土有文黒色土器群の型式学的編年研究"東南アジア考古学. 23. 23-57 (2003)
-
[Publications] 小川 英文: "時間のモノサシをつくる"外大東南アジア研究. 9. 141-152 (2004)
-
[Publications] 小川 英文: "ラロ貝塚群出土土帯群の型式学的編年研究"長野県考古学雑誌. (印刷中). (2004)
-
[Publications] 小川 英文: "川と山の民の考古学事始-フィリピン、ラロ貝塚群の編年研究"考古学ジャーナル. (印刷中). (2004)
-
[Publications] 田中 和彦: "ルソン島北部、カガヤン川下流域の貝塚遺跡に見られる居住の断絶と継続-河川の氾濫との関連で-"環境情報研究. 11. 83-99 (2003)
-
[Publications] 田中 和彦: "フィリピン、ルソン島北部、ラロ、サン、ロレンソIII貝塚出土遺跡の土器"東南アジア考古学. 23. 93-111 (2003)
-
[Publications] 小川 英文: "「野性の残像-過去をめぐるイデオロギーの磁場」,スチュアート ヘンリ編『「野生」の誕生-未開イメージの歴史』:71-102"世界思想社. 280 (2003)
-
[Publications] Hidefumi Ogawa: "Chronological Context of Non-Decorated Black Pottery Phase of Lal-lo Shell Middens. In V.Paz (ed.) Festschrift for Wilhelm G.Solheim II"University of the Philippine Press(印刷中).
-
[Publications] 田中 和彦: "「フィリピンの甕棺葬」、『アジアの甕棺墓-初期歴史時代の交流-』"クバプロ(印刷中).
-
[Publications] Kazuhiko Tanaka: "The continuity and the discontinuity of the occupation of the shell-midden sites in thelower reaches of the Cagayan River, northern Luzon. -with therelation to the floods of the Cagayan River-. In V.Paz(ed.) Festschrift for Wilhelm G.Solheim II"University of the Philippine Press(印刷中).