2006 Fiscal Year Annual Research Report
位置・角度分解EELSスペクトルによる有機半導体薄膜の局所状態分析
Project/Area Number |
15310089
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
倉田 博基 京都大学, 化学研究所, 助教授 (50186491)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
磯田 正二 京都大学, 化学研究所, 教授 (00168288)
根本 隆 京都大学, 化学研究所, 助手 (20293946)
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Keywords | 電子エネルギー損失スペクトル / 電子顕微鏡 / 吸収端微細構造 / 有機薄膜 / 位置分解スペクトル / 角度分解スペクトル / 第一原理計算 / 電子線損傷 |
Research Abstract |
有機半導体薄膜の電子顕微鏡観察や電子エネルギー損失スペクトル(EELS)の測定において、電子線照射による試料の損傷は重要な問題である。有機薄膜の電子線照射損傷におけるハロゲン元素置換の効果を明らかにするために、バナジルフタロシアニンおよび銅フタロシアニン薄膜に対し、電子回折法およびEELS法を適用し電子線照射損傷の機構を検討した。その結果、電子線損傷には結晶構造の崩壊と分子内での結合の切断のプロセスが存在し、前者がより早い段階で生じていることが明らかになった。また、後者のプロセスでは共役π結合の切断が初期段階では生じており、特に窒素サイトのπ結合が損傷を受けやすいことがEELSの微細構造変化の測定から明らかになった。このような損傷の機構において、分子の周辺部に結合している水素をハロゲン元素で置換した場合、塩素やブロムの場合は電子線照射に対する耐性が大幅に改善されるのに対し、フッ素置換した場合は顕著な改善が得られないことが判明した。この違いはハロゲン置換することによる結晶内の分子パッキングの違いが影響していると示唆された。これらの結果は、EELSスペクトルにおける位置分解した局所状態情報を詳細に解析した結果明らかになったものである。 一方、有機半導体薄膜の高分解能観察として、走査型透過電子顕微鏡による高角度暗視野結像法を適用し、塩素化銅フタロシアニンの原子分解能分子像観察に成功した。この結像法では原子番号に依存したコントラストが得られることが大きな特徴であるが、これまで無機物質の観察例が報告されているのみで有機結晶では今回が初めての観察例である。得られた画像には分子の中心に存在する銅サイトと周辺部に存在する塩素サイトが明瞭に観察され、そのコントラスト比は原子番号比の1.7乗に比例することが示された。この結果は、有機半導体薄膜の局所状態分析における新たな観察法として意義がある。
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Research Products
(6 results)