2005 Fiscal Year Annual Research Report
撹乱環境に自生する遺伝資源植物における自生地保全に関する生態遺伝学的研究
Project/Area Number |
15310161
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
山口 裕文 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (20112542)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 純 北海道大学, 農学研究科, 助教授 (00192998)
橋本 信也 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 助教授 (60213500)
中山 祐一郎 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 助手 (50322368)
副島 顕子 大阪府立大学, 理学系研究科, 助手 (00244674)
山根 京子 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 助手 (00405359)
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Keywords | 野生遺伝資源 / 栽培植物 / ジーンフロー / 生態遺伝学 / SNP |
Research Abstract |
5月に研究打ち合わせ会議を開き、前年度の成果を展開するように実施内容を調整し、系統解析、フィールド調査、定点観察を行った。ヒエ属、アズキ亜属、ヒヨコマメ属、ユリ属、野生ダイズについて系統学的解析を行うとともに、塩基配列多型とくにSNPの分布解析を行った。葉緑体DNAには地理的差異を示す変異を検出し、ヒナアズキとヒメツルアズキにおける網目状構造、コオニユリとオニユリにおける地理的隔離を考察した。タデ、イネ科の野生遺伝資源ではフィールド調査によって生育地と繁殖特性との顕著な関係を見いだした。ヒエ属の多年生種pictaの不稔系統が水湿地に生育し、有稔系統が撹乱度の高い場所に生育する傾向を認め、これは野生イネのrufipogonとnivaraの分化に対応する生態シンドロームであり、夏生穀物の栽培化前における撹乱環境における一般的適応現象と推定した。また、中国中慶チベット自治区ではカラスムギの魏生系統がユーマイ畑に隣接するオオムギ畑に混入する実態を確認し、極東アジアへのムギ類の伝播経路におけるインディケータとしての意義を認めた。 ダイズとツルマメではダイズからの遺伝子流動によるツルマメ集団の遺伝的撹乱については韓国テグ市およびアンドン市郊外の両者の同所的サイトにおいて遺伝子流動の実態を中間型の有無と核SSR標識の解析から検討した。両者の同所的サイトは頻繁に観察されたが、種子の形態観察では中間型は見られなかった。代表的な2集団について核SSRを解析したところ、いずれの集団も遺伝的多様性は高く、また観察された異型接合性は座あたり3%〜7%あり、それぞれの集団内に他家受精に由来すると考えられるヘテロ個体が低頻度で観察された。 栽培アズキの成立と伝播の過程をより詳しく調査するために、核に存在するα-アミラーゼ遺伝子の塩基配列を決定し、分子集団遺伝学的手法を用いて解析した。栽培アズキは野生アズキに匹敵する遺伝的多様性を保持しており、これは栽培アズキが異所的に起源したことを暗示している。また、アズキの野生系統と雑草系統の自生集団において撹乱条件と非撹乱条件を設定し、生活史動態を調査した。撹乱への反応は雑草系統の方で良好であった。 撹乱環境における保全という視点から、メタデ、食用ユリ、ノアザミなどの遺伝分析結果と併せてこれらを総括し、成果報告書の原稿を執筆した。
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Research Products
(7 results)