2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15320026
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Research Institution | Independent Administrative Institution National Museum of Art The National Museum of Western art, Tokyo |
Principal Investigator |
幸福 輝 独立行政法人国立美術館国立西洋美術館, 学芸課, 上席主任研究員 (00150045)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 直樹 独立行政法人国立美術館国立西洋美術館, 主任研究員 (60260006)
渡辺 晋輔 独立行政法人国立美術館国立西洋美術館, 研究員 (50332143)
栗田 秀法 名古屋芸術大学, 美術学部, 助教授 (10367675)
金山 弘昌 日本橋学館大学, 人文経営学部, 専任講師 (60327278)
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Keywords | 版画 / 古代受容 / ルネサンス / バロック / 版元 |
Research Abstract |
本年度はこの科学研究費による研究の最終年度にあたるため、報告書の完成をめざし、メールなどで、研究者相互の意見交換を積極的におこなった。報告書は、まず、各国(イタリア、ドイツ、ネーデルラント、フランス)の版画出版と古代の受容をテーマとした簡単な概説を掲載し、ついで、代表者を含む分担者全員が論考を執筆した。幸福はヒエロニムス・コックの版画出版活動を中心に、16世紀半ばのネーデルラント地方における歴史意識の高まりが、一方で古代受容を育み、他方、自国文化の顕彰にもつながっていったこと、そして、それはこの地方においては「古代遺跡のある風景」とも呼ぶべき独特のジャンルの発生にもつながったことを論じた。佐藤は北方における最も早い時期の古代美術の本格的研究者であるデユーラーに焦点を当て、それがどのような性格のものであったかを、ヤーコポ・デ・バルバリやマルカントニオ・ライモンディといったイタリア版画との比較において論じた。渡辺は旧松方コレクションに由来する18世紀イタリアの風景画家フランチェスコ・ズッカレリの風景画に見られる古代モティーフの分析を通じ、当時の古代受容がどのようになされたのかを具体的に論じ、また、そのような古代受容がなされた社会的背景について魅力的な仮説を提示した。金山は17世紀イタリアで出版されたジャーコモ・ラウロの古代建築復元図である『古代ローマの都の光輝』を取り上げ、このような復元図成立の歴史的背景とその広範なバロック建築への影響について詳細な議論をおこなった。栗田は古代彫刻として最もよく知られた作例のひとつである《ラオコーン》についてのフランス・アカデミーにおける彫刻家ジェラール・ヴァン・オプスタルの講演の翻訳と解題を試みた。このような言語による証言と実際の古代彫刻との微妙なズレから、古代伝播における版画の大きな役割が確認されることを栗田は指摘している。
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