2003 Fiscal Year Annual Research Report
西洋史の諸相における文化的ボーダーランドとマージナリティ
Project/Area Number |
15320105
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
飯田 収治 関西学院大学, 文学部, 教授 (70047116)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関 隆志 宝塚造形芸術大学, 造形学部, 教授 (10145766)
中谷 功治 関西学院大学, 文学部, 教授 (30217749)
田中 きく代 関西学院大学, 文学部, 教授 (80207084)
大黒 俊二 大阪市立大学, 大学院・文学研究科, 教授 (50152096)
横山 良 神戸大学, 国際文化学部, 教授 (30127873)
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Keywords | 文化的ボーダーランド / マージナリティ / 中世都市ラグーザ / ラテンとスラヴ / 工業都市ウッチ / ポーゼン州 / 古代ギリシアの他者像 / アメリカの孤児列車 |
Research Abstract |
本研究は、複数の異文化社会の間にあってそれらが互いに拮抗し、融合し、共生しあう、それ自体独自のリアリティを有するボーダーランドに注目して、その生成・発展・消滅のプロセスと構造を西洋史の各時代・各地域に探ろうとするものである。本年はその観点から主として資料収集に力をいれ、研究参加者による国内外への調査出張を行った。特に関・大黒を中心とする古代・中世史班は、研究協力者の参加も得て、米国、イタリア等における博物館視察、現地調査によって多大の成果を挙げた。しかし年度内にはこの研究課題に関する具体的実績を示せる段階には必ずしも到達しえず、目下資料整理とその分析・考察に鋭意努力している。四回の研究打合せ会をもち、本研究課題の趣旨、枠組、分析方法等が検討され、一定の合意を見たが、中でも文化的ボーダーランドとマージナリティ概念の有効性については今後の研究の進捗状況による。当面の成果としては、中世都市ラグーザがラテンとスラヴ、キリスト教とイスラム教の共存を可能とする空間構造を見せることが大黒報告から確認された。19世紀工業都市ウッチの発展(藤井報告)とポーゼン州の協同組合運動の実態(飯田報告)は、国民国家的統合と民族紛争の激化する中での異文化共存の諸契機について示唆を与え、文化的ボーダーランドの多面性を考慮する必要性を教えた。古代ギリシアの他者像の変化(関報告)、近代アメリカの孤児列車の推移(田中報告)は、マージナリティの主観的側面と客観的側面について解明の手掛りを提供した。
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Research Products
(12 results)
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[Publications] 飯田 収治: "元ナチ強制収容所記念遺跡と現代ドイツの青少年"人文論究(関西学院大学人文学会). 53巻・2号. 68-80 (2003)
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[Publications] 根無 喜一: "工兵大尉ジョン・アーダーと東方危機:1876〜1878年"関西学院史学. 31号. 90-121 (2004)
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[Publications] 田中 きく代: "ジャクソニアン期からアンテベラム期にみる女性の公的領域"人文論究(関西学院大学人文学会). 53巻・1号. 29-42 (2003)
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[Publications] 田中 きく代: "19世紀後半における孤児列車の人口動態分析"人文論究(関西学院大学人文学会). 53巻・3号. 68-82 (2003)
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[Publications] 中谷 功治: "ゲミレル島遺跡の構造について"人文論究(関西学院大学人文学会). 53巻・1号. 43-57 (2003)
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[Publications] Seki, Takasi: "Art and Environment in Ancient Athens"Empirical Studies of Art. Vol.21-2. 117-126 (2003)
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[Publications] 横山 良: "(書評)古矢旬著『アメリカニズム 普遍国家ナショナリズム』"西洋史学. 211号. 380-384 (2003)
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[Publications] 横山 良: "(書評)川島浩平著『都市コミュニティと階級・エスニシティ』"アメリカ経済史研究. 2号. 101-104 (2003)
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[Publications] Yokoyama, Ryo: "(Book Review)"Kominken Undo heno Michi"by Shinobu Uesugi"The Journal of American History. Vol.90-1. 305-305 (2003)
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[Publications] 大黒 俊二: "ヴェネティアとロマニア-殖民地帝国の興亡-"多元的世界の展開(歴史学研究会編). 136-169 (2003)
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[Publications] 大黒 俊二: "女子供とお金-中世イタリア都市の場合-"年報都市史研究. 11号. 2-13 (2003)
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[Publications] 大黒 俊二: "環境史と地域史-竹中報告へのコメント-"歴史科学. 174号. 11-14 (2004)