2004 Fiscal Year Annual Research Report
東ティモール「国民国家」をめぐるエスニシティと国際・地域環境
Project/Area Number |
15330034
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
後藤 乾一 早稲田大学, アジア太平洋研究科, 教授 (90063750)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
波多野 澄雄 筑波大学, 大学院・人文社会学系, 教授 (00208521)
吉野 文雄 拓殖大学, 海外事情研究所, 教授 (90220706)
塩崎 弘明 長崎純心大学, 人文学部, 教授 (90123835)
玉木 一徳 国士舘大学, 文学部, 教授 (00207226)
山崎 功 佐賀大学, 文化教育学部, 助教授 (60267458)
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Keywords | 脱植民地化 / 国民国家 / エスニシティ / カトリック / 言語政策 / 経済開発 / 武力紛争 / 旧宗主国 |
Research Abstract |
最終年度たる本年度は、5回の定例研究会ならびに海外調査の報告会をかねた研究成果の中間発表のための合宿を二度にわたり実施した.2002年5月の独立後三年近くを迎える東ティモールは、今なお「国民国家」を創出すべく、きびしい諸条件のもとで苦闘している. 以下では今年次の研究成果をふまえて明らかになった諸点を箇条書き的に抽出しておきたい. (1)国民統合をめぐる最も重要な要因が、複雑な言語状況の中で、いかに「国語」を制定していくかである.四半世紀のインドネシア軍占領下で、結果的に広く定着したインドネシア語あるいは、島内リンガフランカたるテトラン語ではなく、旧宗主国ポルトガルの言語を最重視せざるを得ないところに東ティモールの矛盾が象徴的に示されている. (2)域内環境については、隣国インドネシアとの関係調整が不可欠であり、この点についてはインドネシア領たる西ティモールへの難民問題、独立をめぐるインドネシア国軍の「不法」行動など、いく他の難向はあるものの、少くとも政府レベルでは好関係が組持されている. (3)国際環境としては、無資源国東ティモールの経済開発に必要な外国援助・投資をいかに獲得するかが課題である.昨秋のグスマオ大統領の訪日をめぐる分析からもその点は明確に汲みとれる.他方、こうした対外依存が、新たな「植民地化」につながるのではないかとの懸念も知識層の向いは根強く残っていることも、今後の留意すべき問題の一つである。
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