2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15360381
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
桐野 文良 東京芸術大学, 美術研究科, 助教授 (10334484)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北田 正弘 東京芸術大学, 美術研究科, 教授 (70293032)
水流 徹 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (20092562)
杉本 克久 東北大学, 工学研究科, 名誉教授 (80005397)
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Keywords | 防食処理 / 腐食層 / 表面分析 / 硫化処理 / 煮色着色 / 富化層 |
Research Abstract |
(1)煮色着色したCu-30mass%Zn合金の表面層の構造および電気化学特性について検討した。煮色着色により表面に形成した腐食層の構造は化学的に2層からなる。最表面が極薄いCuO、その下がCu_2Oである。表面近傍のCuの組成はZnの溶出で地金よりCuに富んでいる。煮色着色したCu-Zn合金の酸化電位は未着色の合金より高い。この結果は煮色着色により耐食性が向上することを示している。353K-90%RHの加速腐食試験でも腐食層の防食効果が観測される。この結果は電気化学特性の結果と一致する。 (2)入浴剤(ムトウハップ)を使って着色した銅の着色層構造を明らかにするため、オージェ電子分光、透過電子顕微鏡などで調べた。着色層の主要成分はCu、SおよびOで、Sは着色層の中心部で濃度の極大を示し、Oは深さの向きに単調に減少する。着色層は酸化物結晶のCu_20と、Cu_2S、Cu_7S_4などの硫化物結晶が混合した構造である。表面層は粒径が10nm以下の微細な結晶からなり、Cu_2Oに富む。中心層は粒径が50〜100nmの結晶からなり、Cu_2SおよびCu_7S_4に富む。地金近接層は10nm以下の微細な結晶からなり、Cu_2Oに富む。分光反射率は長波長から短波長に向けて単調に減少する典型的な茶色系の曲線を示す。着色層の色は黄色のCu_2Oと黒褐色の硫化物の混色である。 (3)Sb_2S_5で着色した銅の表面層の結晶構造および化学的な構造はCu_2OおよびCuOの酸化物およびCu_2S_7などの硫化銅の混合層が形成している。着色層の防食効果を分極曲線により評価すると、いずれのpHにおいてもSb_2S_5の塗布によりCuより低い電位から酸化電流が流れ始める。これは着色層の酸化で、地金は変化していない。分極曲線のTafel解析から、pHが高くなると酸化が進行しにくい。Sb_2S_5で着色したCuを80℃、相対湿度が90%の環境中に220時間放置しても腐食は見られない。 (4)銅に数%のSn,Pbを含有する伝世品および埋蔵品の和同開珎の表面層を低角入射X線回折法で調べた。伝世品は亜酸化銅層が形成しているのに対し、埋蔵品はアズライトおよびマラカイトが表面に形成している。TEM観察から表面のアズライト層は2層であり、その一部はシリカやアルミナ層も存在している。
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Research Products
(1 results)