2004 Fiscal Year Annual Research Report
シマオオタニワタリ類における生物学的種の網羅的探索と生殖的隔離の進化過程の解明
Project/Area Number |
15370037
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村上 哲明 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (60192770)
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Keywords | シマオオタニワタリ類 / rbcL / 西マレシア / アダガスカル / 生殖的隔離 / 種分化 / 生物学的種 |
Research Abstract |
今年度は、スマトラ沖地震があって、当初、計画していた年度後半のスマトラ島での植物材料採集は、実行することが出来なかった。しかし、これまでに東南アジアおよびマダガスカルから既に採集している植物材料及び胞子を用いて、生物学的種の網羅的探索と生殖的隔離の進化過程を解明する研究は、問題なく進めることが出来た。具体的には、マレーシア(マレー半島、ボルネオ島サバ州のキナバル山周辺)及びインドネシア(ジャワ島、スマトラ島)、およびマダガスカル東部で採集した個体のrbcL遺伝子の塩基配列解析、および同じ個体から採取した胞子を用いた定量的人工交配実験を継続的に行った。その結果、rbcLの塩基配列が様々な程度(0〜約30塩基)に異なるシマオオタニワタリの多数の個体が既に得られていることがわかった。また、それらの間の人工交配実験によって、個体間の遺伝的距離と交配可能性の関係についてのデータが増えた。個体間の遺伝的距離が、それらが分化してからの時間を反映していると仮定できるとすると(これは無理のない仮定である)、分化してからの時間に対して、どのように生殖的隔離が確立していくかという、まさに種分化の過程を明らかにすることになっていると我々は考えている。実際に、2個体間のrbcLの塩基配列の異なる程度が大きくなるにつれて、生殖的隔離の程度が強くなっていく傾向が顕著に見られている。今後、受精から胚発生までのどのステップで止まることによって、交雑が出来なくなっているかを調べることで、さらに生殖的隔離の機構についても、明らかにしていけることを期待している。
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