2005 Fiscal Year Annual Research Report
シマオオタニワタリ類における生物学的種の網羅的探索と生殖的隔離の進化過程の解明
Project/Area Number |
15370037
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村上 哲明 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (60192770)
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Keywords | rbcL / 分子情報 / 生物学的種 / 隠蔽種 / 生殖的隔離 / 種分化 / 種分類 / シダ植物 |
Research Abstract |
今年度は、西マレシア地域のマレーシア・サラワク州ランビル国立公園に研究協力者のIzu Andry Fijridiyanto(京都大学理学研究科修士2年)を3週間派遣してシマオオタニワタリ類の補足的な採集を行った。入手できた植物材料については、これまで同様、DNAを抽出して、rbcL遺伝子の約1300bpの塩基配列を決定した。得られたrbcLの塩基配列から植物材料をタイプ分けし、それぞれのrbcLタイプごとに形態の違いはないか、生育環境が分化していないかを検討した。また、同じrbcLタイプが地理的にどの範囲に分布しているかも検討した。ランビル国立公園で見出された6つのrbcLタイプは、形態ではほとんど区別ができなかったものの、生育環境には差が見られた。次に識別されたrbcLタイプごとに定量的な人工交配実験およびアロザイム解析を行なった。ランビル国立公園で見出された6タイプは、コントロールでは胞子体が多数形成されたのに対して、遺伝マーカーをヘテロにもつF1雑種が全く見られなかった。したがって、生殖的隔離が既に確立している異なる生物学的種であることがわかった。さらに、これまでに得られていた様々な程度にrbcLの塩基配列が異なるタイプ間の人工交雑実験の結果とも合わせて、rbcLの塩基配列の違いと生殖的隔離の程度の関係を調べた。その結果、予想通り、遺伝的距離が大きくなるにつれて生殖的隔離が強くなる傾向が見られた。また、F1雑種も形成されないような強い生殖的隔離が比較的短時間に形成されることもあることがわかった。さらに、生殖的隔離が完全になる前の段階では、一方の個体を母親にしたときだけ、F1雑種が形成されるような例も複数見出された
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