2004 Fiscal Year Annual Research Report
ウッドバイオマスからカーボンナノチューブへの熱変換技術の開発
Project/Area Number |
15380119
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
畑 俊充 京都大学, 生存圏研究所, 講師 (10243099)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今村 祐嗣 京都大学, 生存圏研究所, 教授 (70151686)
田中 文男 京都大学, 生存圏研究所, 助教授 (10109069)
菊池 光 エスエスアロイ(株), 研究開発部, 取締役
井出 勇 リグナイト(株), 開発部, 取締役
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Keywords | ウッドバイオマス / 木質廃棄物 / カーボンナノチューブ / 木質炭素化物 / 透過電子顕微鏡 / アルミニウムトリイソプロポキシド / 黒鉛 / ダイヤモンド |
Research Abstract |
本研究はウッドバイオマス(木質廃棄物などを含む木質バイオマス)から超高輝度光源管やFRP成形などに利用可能なウッドカーボンナノチューブの開発し、カーボンナノチューブなどが複合化された高機能化木質炭素化物の開発を目的としている。本研究では、直パルス式熱分解法を用いてウッドバイオマスからカーボンナノチューブ複合体を効率的に製造するための最適条件を検討し、得られたウッドカーボンナノチューブ複合体の表面解析によって炭素の構造解析を行い、木材の高付加価値化につなげることを目的とする。 本年度は廃棄木材中の重金属、特に銅・クロム。ヒ素などが木質の炭素化に及ぼす影響について検討するとともに、木質からカーボンナノチューブを製造するための、触媒炭化について検討した。スギから純度の高い結晶化物を効率的に製造するために、用いる触媒の選択を行った。木質炭素化物にSiO_2、あるいはアルミニウムトリイソプロポキシド溶液によって前処理を行った。さらに、熱分解方法として急速熱分解によって処理した木質炭素化物も準備した。これらの触媒を含む木質炭素化物に対してFe, Ni, Coなどを用いて触媒炭化を行ったところ、アルミニウムトリイソプロポキシド溶液を用いた場合のみ、マルチウォールナノチューブが木質炭素化物表面に生成することが分かった。 次に木質炭素化物の高機能化のための黒鉛化処理について検討した。アルゴンガス雰囲気下、室温から500℃まで電気炉内でスギ(Criptomeria japonica)の木片を予備加熱した。予備加熱により揮発物を除いた後、パルス通電加熱装置(エスエスアロイ(株)VCSP-II)を用いて高温での触媒黒鉛化を行った。得られた試料をX線回折装置(XRD)、X線光電子分光装置(XPS)および顕微ラマン分光(micro-RAMAN)法を用いて分析を行った。 1300℃から2160℃の間で加熱処理中に木質炭素化物内にアルミニウムカーバイトが生成する。反応中のアルミニウムカーバイトの存在が、カーボンナノチューブや高配向性積層構造の前躯体として寄与する可能性を示唆する結果が得られた。またラマンスペクトルの解析から2200℃で黒鉛化が最大となることがわかった。 XPSにより調べたところ、2200℃で触媒黒鉛化を行った試験体では欠陥の少ないきれいなグラフェンシートが形成することが明らかとなった。さらに詳細に調べたところ、試験体にダイヤモンド由来のピークが得られた。これらのことから、高温黒鉛触媒化によって得られた生成物は黒鉛とダイヤモンド構造との複合体であることがわかった。ナノチューブの複合化により、更なる高機能化が可能となるだろう。
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