2005 Fiscal Year Annual Research Report
日中英における農村共有資源の開発・利用・保全に関する比較制度分析
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15380147
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
生源寺 眞一 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (40196580)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中嶋 康博 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (50202213)
松本 武祝 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 助教授 (40202329)
川村 保 宮城大学, 食産業学部, 教授 (20177736)
川手 督也 日本大学, 生物資源科学部, 助教授 (80355263)
伊藤 順一 農林水産省, 農林水産政策研究所, 室長(研究職) (80356302)
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Keywords | 共有資源 / 比較制度分析 / 灌漑用水 / 放牧地 / 共同体 / 農業政策 / 環境政策 |
Research Abstract |
中国雲南省において104村の調査票調査を実施した。それらは村民小組リーダーもしくは集落(村民小組の下部機構として位置づけられる)リーダーへのインタビューによる。この調査データと実態調査の知見をもとに住民の資源保全管理に関わる協調行動の規定要因について理論的かつ実証的な検討を行った。そこでは公共財供給の理論と進化論的ゲーム論の概念を援用し、共有資源の利用に関する仮説を提示した。対象は灌漑である。計量分析を行った結果、資源保全のための協調行動は、非農業就業機会が少なく、利用者間の所得格差が小さく、資源の制約が適度にシビアで、共同体の中に様々な社会的交換ゲームが存在する場合に促進されるというものであった。逆にこれらの条件を満たさない共同体では、囚人のジレンマが発生しやすく、共有資源の保全・管理は悲劇的な結末を迎える可能性が高いということが明らかにされた。 イギリスの放牧地管理の実態調査を行った。あわせて2005年度から開始された新しい農業環境政策の枠組みについて情報を収集して行政官ならびに研究者からの意見聴取を行った。イギリスの共有地の管理に関わる法制度は近年大きく変更された。そこでは一般の人々の自由な散策を可能にする侵入権を強化する一方で、カントリーサイド・コードによって人々の行動規範を明確にした。農村地域住民の農村資源の利用権を都市住民へ解放する動きは、パブリックアクセス権の制定を始めとして、イギリスの景観・土地利用・環境政策における戦後の大きな流れを形成している。1980年以降の農業環境政策も同じ方向性をもった制度改革になっているが、農村資源の利用権に制約を与える補償措置として直接支払を実施していることが新たな制度的特徴として注目された。
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Research Products
(7 results)