2006 Fiscal Year Annual Research Report
農業者による野生生物共生システムの開発と農業農村環境政策についての総合的研究
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15380157
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Research Institution | Nippon Veterinary and Life Science University |
Principal Investigator |
松木 洋一 日本獣医生命科学大学, 応用生命科学部, 教授 (10102740)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 洋平 <独>農業環境技術研究所, 理事長 (20012023)
羽山 伸一 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 助教授 (80183565)
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Keywords | 自然共生農業 / 高自然価値 / 生物多様性 / 直接支払い政策 / 農業の多面的機能 / 農業農村環境政策 / 有機農業 / 家畜福祉品質 |
Research Abstract |
(1)長野県上伊那郡飯島町営農センターが進めている「1000ヘクタール自然共生農業」計画に参画し、2007年3月にその基本計画書が策定された。その内容は戦後の農業振興政策が進めてきた化学物質(農薬・化学肥料)や化石エネルギーに依存した農法から、生物生態系の保全技術を基盤とした農法への転換を農業者自らが自覚的に開発し、その結果として高い自然価値をもつ農産物のブランド化と販売チェーンの開発をはかる計画である。また、ブランドが消費者から評価されるために、農業者は農場内と周辺地域の生物多様性を保全するための自主行動規範をつくり、生産過程のトレーサビリティシステムを確立する計画内容である。 (2)絶滅危惧種ツシマヤマネコの保護のため、環境と調和するほ場整備事業が2004年度から長崎県対馬市上県地区において開始され、その事業による生態系保全への影響を調査規制する協議会が設立された。その協議会に研究分担者が参加し、工事実施による影響をモニタリングするシステムの開発研究に従事した。圃場整備が実施され、今後は農業者がツシマヤマネコ生態系保全農業をになう経営体の組織化と販売戦略を実現する段階に至っている。そこで今後の地域主体の組織化についての実態調査を行い、あたらしい経営体の形成の条件を分析した。 (3)農業者による自然生態系・生物多様性の保全システムを事例研究するために、昨年度に引き続き北海道釧路湿原における酪農家がタンチョウツルの保護、湿原の保全をいかに実践しているかについて実態調査を行った。昨年度は鶴居村の酪農集団を調査したが、今年度は標茶町の農業用排水管理組合の調査によって、農業者と環境保護団体および自然再生法による事業を実施している国土交通省、環境省の間での協働関係を分析した。 それぞれの政策事業が必ずしも総合的な地域自然保全システムを実現していないこと、とくに湿原を直接囲んでいる草地との関係が考慮されていない点を検討した。今後酪農家と自然保護NPOとの共同的な調査研究によって、釧路湿原における生物多様性保全と酪農業が共生するシステムの開発を計画している。 (4)イギリス、オランダの新しい農業環境政策と自然管理農業Nature Management Farmingの実態調査をおこない、直接支払事業の内容を把握した。
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Research Products
(2 results)