Research Abstract |
平成15年度は研究初年度であり,研究分担者のそれぞれの課題に応じて調査対象地区を選定し,中山間地における農村環境整備計画を誘導する過程に潜む諸課題を整理するとともに集落ワークショップを実施して具体的な計画手法の課題を実践的に検討した。 松本は,岐阜県下の2つの農山村集落において各3回の啓発型ワークショップを実践した。集落住民とともに地域資源マップ,環境点検マップを作成し,集落土地利用構想及び整備構想を集約した。里山や神社などの保全ゾーンと今後の生活に必要な整備ゾーンに対する住民意向は,ほとんどが共通しており,ワークショップは住民相互の地域認識を再確認する場であり,将来の世代に継承すべき課題を整理する場であることが明らかになった。高橋は,広域化に対応した農村環境整備の課題を明らかにするために市町村ごとの人口動態を分析した。その結果,農村部では15歳から24歳の10年間での人口流出が著しいこと,人口流出の程度は大都市からの距離と第3次産業就業者率に依存していることから,若年層の就業機会の確保に配慮した農村の整備が重要であることが示唆された。星野は,広島県高宮町,京都府美山町,宮崎県綾町,岡山県美星町等で取り組まれてきた住民自治組織の再編を取り上げ,役場及び自治組織役員へのヒアリング調査により,如何に行政と住民の協働関係が構築されたか,如何に住民自治組織の自治力が成長していったか,如何なる形成条件が作用したのか等の問題について整理を行った。九鬼は,和歌山県の中山間地域にある農業集落を対象に,土地利用の現況を世帯主への聞き取りや現地踏査によって調べ,所有者の年齢や後継者の状況から将来耕作放棄される可能性の高い農地を予測し,その位置的な特徴を明らかにした。また,集落座談会を交えながら集落の生活環境,自然環境に関する現状も把握し,中山間地域の定住環境の確保に必要な整備課題を考察している。三宅は,農業,林業,伝統文化などの地域資源を活用した体験型ツーリズム(グリーンツーリズム)への取組みを行っている中山間地域の自治体を研究対象として,取組みの現状を把握した。さらに,体験農園として農地を都市住民に提供している集落を選定し,集落の現状および体験農園の実施状況等を詳細に調査した。一方,ツーリズムに対する都市住民の行動と意識を明らかにするために,アンケート調査結果を用いて分析を行っている。
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