Research Abstract |
診断法の改善: 1.北海道の飼犬・飼猫のエキノコックス・スクリーニング検査(糞便内虫卵および/または抗原検査)で陽性となった犬3例および猫1例について,虫卵から多包条虫DNAを検出し,確定診断を行った。猫からのエキノコックス虫卵の排泄は本邦初報告である。 2.昨年度より行っていた虫卵排泄前の確定診断法を改善するため,新たなプライマーを設計してHot start法を導入することにより感度を向上させた。犬へのエキノコックス感染実験を行って確認したところ,虫卵排泄前の糞便からのエキノコックスDNA検出率は26〜73%であった。しかしながら,6頭の感染犬に対して感染後14日目に駆虫し駆虫後の糞便を検査したところ,全頭からDNAが検出され,駆虫と組み合わせたDNA検出の有用性が確認された。 3.昨年度に引き続き,ザンビアにおける単包条虫流行地で犬糞便を採取し検討を進めている。現在までに540頭の糞便内虫卵検査を実施し,70頭からテニア科条虫卵を検出している。今後,これらの材料を用いて,現在キット化を進めている糞便内抗原検出sandwich ELISA法の評価およびTrachselら(2007)が開発し共同研究が進んでいるエキノコックス属とテニア属(いずれもテニア科)を区別できるmultiplex PCRの有用性を検討する予定である。 疫学調査: エキノコックス症感染リスクマップ作成のため,札幌市北東部において,キツネの営巣地選択および行動域について調査を継続した。解析の結果,営巣地は,河川により近く,住宅からより遠い場所に偏っていることがわかった。また,育児期間を通して巣を替えない家族が確認された。調査期間中に採取した材料(キツネ捕殺個体,糞便等)の解析がまだ完全に終わっておらず,最終目標には至っていないが,今後,GIS(地理情報システム)を用いてデータ解析を進め,リスクマップを作成する予定である。
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