2004 Fiscal Year Annual Research Report
肝移植後のT細胞数の激減に伴う免疫機能の低下及び拒絶反応の適確な診断とその対策
Project/Area Number |
15390394
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
佐藤 浩 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (90090430)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 紘一 京都大学, 大学院・医学研究科, 教授 (20115877)
貝原 聡 京都大学, 大学院・医学研究科, 講師 (70324647)
小澤 和恵 滋賀医科大学, 医学部 京都大学・大学院・医学研究科, 名誉教授 (00026858)
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Keywords | 生体肝移植 / T細胞 / Bcl-2 |
Research Abstract |
京都大学では既に1000例を超える症例数を経験している。しかしながらその成績は、移植後5年生存率が小児症例で83%、成人症例で69%とまだ満足できるものではなく、成績向上のために術後管理のさらなる改善が望まれる。なかでも術後の免疫抑制療法は、個々の症例の免疫機能により免疫抑制過剰となり重篤な感染症を併発したり、逆に免疫抑制が不十分なために拒絶反応が発生しグラフトロスにつながることもある。 現在までに200症例の約1500の検体について測定した結果、移植直後のT細胞は3分の1に激減し、それに伴う免疫能の低下はしばしば重篤な感染症を引き起こす。移植による死亡例の3割は術前にすでに末梢血Tリンパ球のCD8+細胞内のeffector cellが著しく増加していた症例であった。この事実をもとに現在prospectiveの研究-テーラーメイド療法-に入っている。 Bcl-2タンパクはアポトーシスや種々の障害因子による細胞死に対して防御的に作用するミトコンドリア・タンパク質である。検討を行なった121名(13名は死亡)の移植患者は術後のT細胞数の回復過程から3群(I,II及びIII)に分けられた。それぞれの群でPCRによりbcl-2発現量を計測し、フローサイトメトリーでT細胞のプロフィールの変化を検討した。いずれの群においてもT細胞数とbcl-2値の間には、統計的に有意な逆相関が認められた。このことから、患者のT細胞のbcl-2発現レベルを計測するによってT細胞数の回復過程、したがって患者の感染症に対するリスクの程度、を予測できることが示唆された。 これらにより、本研究の目的でもあるテーラーメイドの免疫抑制療法の確立が実現可能になると考えられる。
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