2003 Fiscal Year Annual Research Report
痴呆性高齢者に園芸療法を適用した看護ケアモデルの開発
Project/Area Number |
15390678
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
安川 緑 旭川医科大学, 医学部, 講師 (10210246)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森谷 敏夫 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 教授 (90175638)
伊藤 喜久 旭川医科大学, 医学部, 教授 (20129026)
千葉 茂 旭川医科大学, 医学部, 教授 (90171941)
広井 良典 千葉大学, 大学院・社会科学研究科, 教授 (80282440)
大澤 勝次 北海道大学, 大学院・農学研究科, 教授 (20322836)
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Keywords | 痴呆性高齢者 / 園芸療法 / グループホーム / 生活活性化 / 認知機能 / 自律神経系活動 / 生活環境 / 看護ケアモデル |
Research Abstract |
園芸療法(HT)は植物の特性を活用した補完・代替医療として今後の発展が期待されている。本研究では、グループホームで生活する痴呆性高齢者にHTを適用し多様な尺度を用いてその効果を調べるとともに、さまざまな視点から分析を進め、HTを適用した痴呆性高齢者の看護ケアモデルの開発を目的としている。 今年度の調査では、痴呆性高齢者グループホームの高齢者27名(Aホーム14名、Bホーム13名)を実験群として、週1回3ヶ月間のHTを適用し、適用期間中の調査ならびに適用前・後とその3ヶ月後の各時期に心身機能や社会的機能などの変化を調査した。また、HTを適用しない2つのグループホームの痴呆性高齢者30名(Cホーム17名、Dホーム13名)を対照群として同様な内容の調査を行い、下記のような結果を得た。なお、それぞれの変化について有意差の検定をWilcoxon符号付き順位和検定にて行った。 1.実験群ではHT適用前後でMMSEの得点ならびにSDRSの得点が有意に変化し、HTが痴呆性高齢者の認知機能や社会的機能に効果的に作用することが示された。2.また、実験群では自律神経系活動において交感・副交感神経活動を反映する尺度ならびに副交感神経活動を反映する尺度が顕著に増加するなどの変化が認められ、HTが痴呆性高齢者の自律神経系活動を亢進させる可能性が示された。3.種々の臨床検査、骨塩量、日常生活動作など、身体機能に関する調査では、対照群Dホームの結果がもっとも良好であった。Dホームの場合、生活者の男女比やスタッフの年齢層、空間設計、近隣の環境などに他のホームとは異なる特徴がみられ、疾患を有する対象者が少ないことなどが認められた。なお、実験群Aホームでは同様の調査項目において、HTの適用により運動と栄養とのバランスに不均衡を生じた可能性が示唆される結果であった。4.HTの適用における高齢者の変化として、環境への適応、役割獲得、関係形成、生活リズムの正常化、全人的回復、精神の安定、生活の活性化などが認められた。5.園芸療法の適用に際しては、対象者の身体機能の程度や疾患の有無、運動と栄養とのバランスを考慮した個別のHTプログラムの提供、スタッフに対する研修、屋内外の実施空間の確保と工夫、終了後のフォローなどが検討課題として抽出されている。 また、補完・代替医療やHTの先進事例に関する海外調査では、メルボルンのスインバーン工科大学とその関連のガン代替医療施設や統合診療施設、ビクトリア州園芸療法協会関連の病院、施設を訪問し、今後におけるHTの研究・普及上、極めて有益な情報収集ならびに人的交流が行われた。 以上、今年度の結果からHTを適用した看護ケアモデル案を作成し、それを次年度の調査に反映させてモデルの完成を目指す予定である。
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