Research Abstract |
環日本海域の7都市,瀋陽(中国),ウラジオストク(ロシア),ソウル(韓国),北九州,金沢,東京,札幌(日本)で,冬及び夏に大気粉塵を捕集した。更に,家庭石炭燃焼ストーブ排出粉塵及びディーゼル車排出粉塵も捕集した。粉塵抽出物について,多環芳香族炭化水素9種類(フルオランテン,ピレン,ベンツ[a]アントラセン,クリセン,ベンゾ[b]フルオランテン,ベンゾ[k]フルオランテン,ベンゾ[a]ピレン,ベンゾ[ghi]ペリレン,インデノ[1,2,3-cd]ピレン)とニトロ多環芳香族炭化水素4種類(1,3-,1,6-,1,8-ジニトロピレン,1-ニトロピレン)を,それぞれ蛍光,化学発光検出HPLCで測定した。瀋陽とウラジオストクの平均大気中多環芳香族炭化水素濃度はソウル,北九州,金沢,東京,札幌より著しく高かったが,平均大気中ニトロ多環芳香族炭化水素濃度は北九州以外を除くと同レベルであった。いずれの都市でも多環芳香族炭化水素とニトロ多環芳香族炭化水素濃度には明確な季節変動(冬>夏)が見られた。各都市の多環芳香族炭化水素とニトロ多環芳香族炭化水素の発生源を明らかにする為に,クラスター分析及び因子分析を行った結果,3つの主要クラスターが見出された。更に,藩陽とウラジオストク,北九州のピレンに対する1-ニトロピレンの濃度比は石炭燃焼ストーブ排出粉塵のそれに近似し,ソウル,金沢,東京,札幌の値はディーゼル車排出粉塵のそれに近似していた。本研究は,ピレンに対する1-ニトロピレンの濃度比が,都市大気粉塵の発生源である石炭燃焼システムとディーゼル車の指標として有用なことを示している。
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