Research Abstract |
本研究は,ソフトコンピューティングの高齢者福祉工学分野への適用拡大をはかり,問題解決に有効な情報の抽出を行い,当該関係者への参考に資するとともに,その有用性を示すことを目的としている.具体的には,近年普及の著しいインターネットサービスのうちWWWに焦点を絞り,高齢者にとって見やすいWebコンテンツを作成するときに役立てるための,視認性に関する定量的なデータを蓄積するとともに視認性評価のモデルを構築することを目標としている. 17年度は,幅広い年齢層の被験者を対象にした視認性に関する心理データを収集し,これらを対象としてソフトコンピューティングの手法のひとつである自己組織化マップや多変量解析の手法を適用し視認性予測モデルを構築し,その有用性を検証した.これらの成果をもとに,学術誌論文掲載7編,学術英文誌掲載決定1件,学会発表12演題を報告することができた. さらに,今後の研究への展開を考えて,取り扱うことのできるデータを拡張するために,視認性に関する生理学的データの計測を行った.ひとつは,視線計測装置を用いた眼球運動で,もうひとつは,機能的MRIによる脳賦活部位の特定である.眼球運動では,コントラストの変化により黙読時間に有意な変化が現われることが分かった.この結果から,眼球運動に関係する複数の生理指標を抽出し,これまで取り扱ってきた心理指標のデータと合わせ,ソフトコンピューティングの手法を利用してパターン判別を行うことで,より確度の高い視認性評価ができる可能性を示すことができた.また,機能的MRIにより,脳活性部位にもコントラストの違いによる変化が現われることが確認された.視認性の違いにより脳の活性化部位に違いがあることは,今後,複数の機能モジュール(例えばニューラルネット)からなる階層型視認性モデルを考える必要性を示唆するものであると考えた.
|