Research Abstract |
WCDの一連の活動及び勧告を日本の実施機関がどのように捕らえていたかについて,文献調査及び関係機関担当者からの聞き取り調査を行い,WCD報告書作成プロセスにおける問題点を明らかにした。 静岡県の井川ダム(1957年完成)について現地調査を行った。この建設により,94世帯が「新しい村造り計画」に基づいて村内移転した。この計画の大きな特徴は,これまで井川村内ではほとんど行われていなかった水田耕作を新たに開始した点である。静岡県は高冷地での稲作を推進するために専門家による現地調査を実施し,西山平の試作田では住民の移転前に実際に収穫を上げて見せた。更に移転後4年間にわたり移転住民のための農業指導を行った。その結果,移転後の住民は稲作を軌道にのせることが可能となった。 インドネシア・ハサヌディン大学,同・アンダラス大学,スリランカ・ペラデニア大学の関係者とインドネシア・ジャカルタで一同に会したワークショップを行った。ここでは,コタパンジャンダム,ビリビリダム(以上,インドネシア),マハベリ計画(スリランカ),井川ダム,沼田ダムの各事例における住民移転についての研究事例が報告され,論点の整理と共有化が図られた。この中で,金銭補償が制度化される前の日本における経験は,現在の開発途上国に適用可能であると考えられた。 スリランカでは,コトマレダム(1979年完成)による移転住民の追跡調査を実施した。調査においては,ダム湖(元の居住地)近辺に移転した住民,遠隔地に移転した住民に大きく分類し,更に後者を気候や水文上の差を考慮して2地区に分類した。そのうえで,ペラデニヤ大学と共同して,計250世帯強の移転住民に対して,移転前後における,生計,居住環境,子弟の教育,コミュニティーの社会・文化的要素などの変化を問うインタビュー調査を実施した。
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