2004 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀後半におけるフランス哲学の展開とイギリス思想の導入に関する研究
Project/Area Number |
15520017
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Research Institution | GAKUSHUIN UNIVERSITY |
Principal Investigator |
杉山 直樹 学習院大学, 文学部・哲学科, 助教授 (50274189)
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Keywords | フランス哲学 / リボー / フランス・スピリチュアリスム |
Research Abstract |
本年度は、19世紀後半、特に70年代以降におけるイギリス心理学のフランスへの導入を中心として研究を行った。 明らかになったのは次の諸点である。 1.リボー(Th.Ribot)の哲学史上の重要性。「科学的心理学の祖」とのみ位置づけられることの多い彼は、1870年代、特にスペンサーの学説を導入しながら、「ユニヴェルシテの哲学」であるスピリチュアリスムに対して激しい批判を行いながら活動を始め、同時にRevue philosophiqueという「ユニヴェルシテ」外のメディアを設立しつつ、以後世紀末に至るフランス哲学の展開に軽視できない影響を与えている。 2.1880年代以降のフランス思想界の見取り図についての再検討の必要性。スピリチュアリスムは「論理学」や「形而上学」と共に、「心理学」を自らの特に重要な構成要素としていたが、それに対してリボーの活動は、心理学というディシプリンを一実証科学として独立させると同時に、従来の哲学が扱うとされた事象領域を限定・縮減しようという意味を有する。心理学(あるいは生物学)と哲学(特に形而上学)との関係を執拗に問い続ける80年代以降のフランス哲学、ラシュリエやジャネ、ベルクソンたちによる諸論考の意味は、こうした文脈から、一種防衛的なものとして、再解釈されるべきである。 3.この防衛は大きく二つの方向においてなされていた。(1)「心的なもの」の再領土化(ラヴェッソン〜ベルクソン)。(2)哲学の脱心理学化的再構築としての「超越論」化(ラシュリエ)。 以上の研究は、昨年度のそれと併せて、19世紀後半のフランス哲学史の再検討、特にいわゆる「フランス・スピリチュアリスム」という系譜に対する相対化、という成果をもたらしたと言える。
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