2005 Fiscal Year Annual Research Report
ベンヤミンのアレゴリー的思考とメディア理論の接合をめぐる研究
Project/Area Number |
15520157
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
山口 裕之 東京外国語大学, 外国語学部, 助教授 (40244628)
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Keywords | メディア理論 / ベンヤミン / 記憶 / 歴史概念 / 都市論 / 文化研究 |
Research Abstract |
1.ベンヤミンにおける思考の特質を、メディア理論におけるハイパーテクスト的特質と関連付けていく意図のもとに、まずは『パサージュ論』の電子テクスト化を昨年度以来続けてきたが、それに引き続きベンヤミンの著作の電子化を継続して行った。現在のところ、著作そのものに関しては全体の65パーセント程度の電子化が行われた。とりあえず今回の研究に必要な箇所から電子化を行い、研究の遂行に非常に貢献したが、それだけではなく、とりあえずこれまで完了することの出来た部分だけでも(これからさきも残る部分のテクストの電子化を継続していくが)、まちがいなくこれから先の研究遂行上、きわめて大きな資産として研究の土台となるだろう。 2.今回の研究課題「ベンヤミンのアレゴリー的思考とメディア理論の接合をめぐる研究」では、ベンヤミンのメディアをめぐる思考が、19世紀の哲学的・人文的思考の土台となる線状的・概念的叙述に対置されるような、画像的断片の再構成による新たな思考像の獲得という思考のあり方(アレゴリー的思考)に依拠していること、そしてこのことがとりわけボルターのハイパーテクスト理論と密接な関係にあることを出発点としていた。研究を進めていく過程で、一方では当初の研究の目標にしたがって、「画像的メディア」と「言語的メディア」の両系列の技術的複製可能性がそれぞれ高められることによって、現在「ハイパーテクスト」という技術メディアのかたちをとっているものの理念的なモデルともいうべきものを作り出していることを確認した。しかし、他方では、ベンヤミンのメディアに関する思考をささえるアレゴリー的思考が、根本的には彼の特殊な歴史概念によって規定されているために、彼の先鋭的な技術志向が実はその反対物であるかのような西欧ユダヤ主義的な歴史概念や記憶の理論とも結びついていることが明らかになってきた。
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