2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15530179
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Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
大来 洋一 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (70303089)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小原 美紀 大阪大学, 大学院・国際公共政策研究科, 助教授 (80304046)
小塩 隆士 東京学芸大学, 教育学部(平成16年4月より神戸大学・大学院・経済学研究科), 助教授 (50268132)
太田 清 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (00233122)
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Keywords | 貯蓄率 / 個票 / 資産格差 / 社会保障資産 / 年金と就業行動 / 年金の再分配効果 / 世代内公平 / パネル調査 |
Research Abstract |
本研究のテーマは要約すれば、社会保障と財政赤字と家計の反応であるが、この点に関して、マクロ・データによる社会保障給付・負担の貯蓄率に与える影響については、今年度においては操作変数法による回帰分析を暫定的な形で行った。これまでのところ有意な影響がない、という計測結果を得た。 ミクロ的な分析(個票による分析)については、第一に日本における資産格差の実態を「全国消費実態調査」等の家計統計を利用して行った。所得階層によって貯蓄率が違うために、資産ストックの差は、所得フローのそれよりも大きく、金融資産格差は徐々に拡がっているが、日本は国際的にみて資産格差が大きいとは言えない。そして、資産格差を考える上では、社会保障資産(特に年金資産)をも考慮する必要があることが今後の研究につながる結論である。 第二に、公的年金と就業行動の関係に関する定量的な分析である。1996年『高年齢者就業実態調査』の個票に基づき、公的年金の制度変更が高齢者の就業・引退確率に及ぼす影響を一定の仮定をおいて試算するとともに、その年金財政への影響を定量的に試算した。 第三に、公的年金の所得再分配効果を、1996年「所得再分配調査」の個票に基づき、生涯所得ベースで考察するとともに、年金の財源調達方法を変更した場合の再分配効果の違いを試算した。年間所得ベースと比べると生涯所得ベースの再分配効果はかなり小さいこと、所得比例の負担・定額の給付という制度が世代内公平の観点から見て望ましいことを確認した。 パネル・データ関連では、「消費生活に関するパネル調査」[(財)家計経済研究所]を用いて、この10年の経済の長期停滞下における家計の変化を追跡し、デフレ不況の影響や、所得格差の拡大傾向について研究した。また。同じ調査をもとに、日本人のリスクへの対処法を調査した。その結果は主に貯蓄の取り崩しに頼り、保険、経済的援助、借り入れにもある程度頼ること、すなわち日本人は主に自分の貯蓄の取り崩し(自己保険)によってリスクに対処し、借り入れ、保険などにはそれほど頼らないということがわかった。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 小塩隆士, 大石亜希子共著: "年金改革の財政的帰結:高齢者の就業・引退選択を考慮したマイクロ・シミュレーション"季刊社会保障研究. 第39巻第3号. 216-233 (2003)
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[Publications] 小塩隆士: "Social security and intragenerational redistribution of lifetime income in Japan"The Japanese economic review. (近時掲載予定).
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[Publications] 小塩隆士: "「日本の教育経済学:実証分析の展望と課題」(妹尾渉氏と共著)ESRI Discussion Paper Series No.69,2003年10月"経済分析(経済社会総合研究所). (近時掲載予定).
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[Publications] 小塩隆士: "Social security and trust fund management"Journal of the Japanese and international economies. (近時掲載予定).
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[Publications] 樋口美雄, 太田清, 家計経済研究所編著: "女たちと平成不況(1、5、7章太田執筆、9章小原執筆)"日本経済新聞社. (2004)
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[Publications] 太田清(樋口美雄, 財務政策総合研究所編著): "日本の所得格差と社会階層(「日本における資産格差」の第2章)"日本評論社. 21-43 (2003)
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[Publications] 小塩隆士, Akiko S.Oishi, J.Gruber, D.Wise編: ""Social security and retirement in Japan : an evaluation using micro- data" in Social Security Programs and Retirement around the World"The University of Chicago Press. 399-460 (2004)