Research Abstract |
学級経営における「どうしてよいか分からない」とか「自分は教師に向いていないのではないか」といった悩み,困難,疑問などを伴った危機的体験を通して,教師がどのような実践的知識(イメージ,実践の原理,実践のルールとそれらの関係性)をもつにいたるのかにっいて検討した。香川県内の公立小学校に勤務した経験のある3人の教師(U, F, S)に,学級経営上の問題について各2回,計6回のインタビューを行った。その結果,例えば,教職10年目で,5年生を担任したとき2年間学校に来ていない男子がいた。解決に向けて,同僚の先生,前担任の先生,教頭先生,校長先生に相談した。実際には,校長先生と一緒に4月から週に1,2度の家庭訪問を行い,その子の好きなゲームをしたり,放課後は勉強を教えたりした。また,家庭訪問に教師と共に行ける児童を募ったり,子ども同士の関係性ができるように手助けした。その結果,教師と児童の心の距離を近づけ,次第に学校近くまで出てこれるようになった。最終的には,学校に来ることができるようになった。このことから,不登校の児童に対しては,その子を「主人公」にし,自ら選択させ決めさせることによって,心の距離と物理的距離を近づけられること,不登校を治そうとするのではなく,学校に来られない苦しみをわかろうとすること,問題は教師間で共有し複数で対応することの大切さを学んだ。 F教師は学級経営に対して「宇宙旅行」というイメージをもち,それにつながる原理には,子どもとの信頼関係を大切にするために,常に子どもの立場になって考えるべきであるといった6つの原理があった。そして,それぞれは,4〜6の実践のルールに繋がっていた。U教師は学級経営に「和」というイメージをもち,それにつながる原理には,教師同士で連携を図り,学年全体で共有すべきであるなど6つの原理があった。そして,それぞれは,2〜9のルールに繋がっていた。S教師は学級経営に「綿」というイメージをもち,それにつながる原理には,教師同士で連携を図り,悩みや問題を共有すべきであるなど6つの原理があった。そして,それぞれは3〜6のルールに繋がっていることが分かった。 3教師ともに「教師と子どもの人間関係」に重点を置いていること,実践の原理の方が実践のルールより,2人以上の共有率が高いことなどが明らかになった。
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