2003 Fiscal Year Annual Research Report
拡張π電子系多硫黄ジチオレート-金属錯体による新しい導電性磁性体の開発
Project/Area Number |
15550049
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松林 玄悦 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (90029182)
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Keywords | マンガン錯体 / ロジウム錯体 / イリジウム錯体 / ジチオレート錯体 / シクロペンタジエニル錯体 / X線結晶解析 / 磁化率 / 電導度 |
Research Abstract |
多くの硫黄原子を含むジチオレートC_8H_4S_8配位子をもつ金属錯体では、この配位子上に不対電子をもつ酸化体が安定で、また磁性体としても特異な性状を示すものが得られると思われる。本研究では、まず常磁性金属イオンと酸化されたC_8H_4S_8配位子上の不対電子からなる特徴的な磁性を示す新しい錯体集積体の創製を目指した。 エタノール中においてC_8H_4S_8(CH_2CH_2CN)_2とナトリウムエトキシドとの反応によってNa_2(C_8H_4S_8)を生成し、それとMnCl_2 4H_2Oの反応によって[Mn(C_8H_4S_8)_2]^<2->塩を合成した。磁化率の測定から、[PPh_4]_2[Mn(C_8H_4S_8)_2]の有効磁気モーメントは、10-300Kにおいてμ<eff>/μ_B=5.5となり、S=5/2のMn(II)の状態にあり、固体状態で四面体構造のアニオンが孤立して存在すると考えられる。また、[NBu_4]_2[Mn(C_8H_4S_8)_2]では、30-300Kにおいてμ<eff>/μ_B=6.0であり、上述の錯体と同様にS=5/2の状態にあるが、30K以下では錯体はS=3/2の状態に転位することがわかった。これらの錯体の第一と第二酸化電位は、-0.44および+0.48V(vs. Ag/Ag^+)であり、これらはC_8H_4S_8配位子中心の酸化に対応する。ヨウ素との反応によって得られた[Mn(C_8H_4S_8)_2]^0錯体の磁化率は、S=3/2の状態にあり、しかも錯体分子間には強い反強磁性相互作用(θ=-60K)が存在することがわかった。この相互作用は、硫黄原子を介するものと思われる。この錯体は室温で3.0x10^<-2>Scm^<-1>(粉末加圧成型試料)の電導度を示した。 さらに、エタノール中において、NBu_4Br存在下ReCl_5とNa_2(C_8H_4S_8)との反応によって、非平面性の四角錐構造をもつ[NBu_4][Re(O)(C_8H_4S_8)_2]錯体を合成した。ヨウ素との反応によって1電子酸化体[NBu_4]_<0.1>[Re(O)(C_8H_4S_8)_2]を得た。C_8H_4S_8配位子での酸化が起こり、この錯体は、室温で0.29Scm^<-1>(粉末加圧成型試料)の電導度を示し、金属的挙動をとった。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] K.Kubo, M.Nakano, H.Tamura, G.Matsubayashi: "X-ray Crystal Structure and Electrical Conductivity of [Au(ppy)(C_8H_4S_8)]_2[PF_6][ppy-=C-Deprotonated-2-phenylpyridine(-) ; C_8H_4S_8^<2->=2-{(4,5-Ethylenedithio)-1,3-dithiole-2-ylidene}-1,3-dithiole-4,5-dithionate(2-)]"European Journal of Inorganic Chemistry. 22・12. 4093-4098 (2003)
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[Publications] K.Kawabata, M.Nakano, H.Tamura, G.Matsubayashi: "Crystal Structures of [Rh(η^5-C_5H_5)(C_3S_5)] and [Rh(η^5-C_5Me_5)(C_3S_5)] and Properties of their Oxidized Species"Journal of Organometallic Chemistry. 689・2. 405-410 (2004)
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[Publications] K.Kawabata, M.Nakano, H.Tamura, G.Matsubayashi: "Properties of Organometal-Sulfur-rich Dithiolate Complexes [M(L)(C_8H_4S_8)](M=Rh^<III> and Ir^<III> ; L=η^5-C_5H_5 and η^5-C_5Me_5) and Their Oxidation"European Journal of Inorganic Chemistry. (印刷中). (2004)
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[Publications] 松林玄悦, 黒沢英夫, 芳賀正明, 松下隆之: "錯体・有機金属の化学"丸善株式会社. 204 (2004)